2013年の連載開始以来、世界一のジャズミュージシャンを目指す少年たちの葛藤をリアルな演奏シーンと共に描き、世代を超えて多くの支持を集めるマンガ『BLUE GIANT』がアニメ映画化。その音楽を担当するのは、原作者の石塚真一と以前からプライベートでも親交のある上原ひろみだ。作品には“上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット”のメンバー他、井上銘、挾間美帆など、彼女の呼びかけで集まったジャズとクラシックのトップミュージシャンが参加している。サウンドトラックは、ジャズのダイナミズムを表現したJ.Coltraneによるモードジャズの名曲「Impressions」のカバーで幕を開け、ファンキーなジャズロック、美しいストリングスをバックにしたバラード、グルーヴィなラテンチューンなど、短いトラックながら東京を舞台に繰り広げられる物語に合わせた、さまざまなスタイルのジャズ楽曲が並ぶ。そして、物語の核となるジャズトリオ、JASSのメンバーで主人公の宮本大のテナーサックス演奏は、J-Squadのメンバーとしても知られる馬場智章、ピアノの沢辺雪祈を上原ひろみ自身、そしてドラムの玉田俊二の演奏には、上原ひろみのラブコールによって実現した石若駿という鉄壁の布陣で構成。グループのレパートリーとしてこの映画のために書き下ろされた「N.E.W.」、サックスとドラムのデュオ「WE WILL」、そして3人が熱く燃え上がる渾身（こんしん）のハイライト曲「FIRST NOTE」、エンドロールで流れるスピリチュアルなムードが漂うタイトル曲「BLUE GIANT」は、このメンバーによって演奏されている。マンガのファンはもちろん、上原ひろみのオリジナル作品としてジャズファンにもアピールできる本格的なジャズアルバムといえるだろう。