Sonicwonderland (feat. Sonicwonder)

Sonicwonderland (feat. Sonicwonder)

「新しいバンドのメンバーを探して、一緒に冒険の旅に出る。そしてフィールドに出ていってロールプレイングゲームで『仲間を手に入れた』みたいな感じで、一つ一ついろんなステージをクリアしていくように楽曲を作っていきました」と、上原ひろみは2年ぶりとなるオリジナルアルバム『Sonicwonderland』についてApple Musicに語る。コロナ禍の中、ピアノと弦楽四重奏という編成で制作された『Silver Lining Suite』(2021年)は、上原ひろみの作曲/編曲家の才能を改めて知らしめる意欲的な作品となっていたが、今作は、アドリアン・フェロー(B)、Gene Coye(Dr)、Adam O'Farrill(Tp)という腕利きのメンバーを集めたカルテット編成で、Hiromi's Sonicwonderというプロジェクト名になった。 「最初にまずベースのアドリアン・フェローと2016年に会いまして。初めて一緒に音を出した時に、初めてとは思えない何か強いつながりを感じました。『いつかこの人とバンドをやろう』と、自分の中で一つの目標としてあり、そのためにずっと曲とかを書いたりしていたんです」と、今回のプロジェクトのきっかけについて上原は語る。その後、曲を書いているうちに、ドラムスのGene Coye、そして、メロディを紡いでくれるミュージシャンが欲しいということで、トランペッターのAdam O’Farrillに声をかけ、今回のプロジェクトが始動した。グループ名は、「2007、8年にHiromi's Sonicbloomというバンドをやっていて、その時もかなりキーボードをたくさん弾いたんですけど、自分の中で“Sonic”という言葉をバンドに付けるときは、とにかくキーボードに囲まれるというコンセプトにしていて。今回は『Sonicwonderlandにみんなで行く』という意味合いも込めて、Hiromi's Sonicwonderという名前にしました」 レコーディングは、個々のメンバーの個性と力量がぶつかり合う刺激的な方法で行われた。「基本的にまずリハーサルを2日間やって、それから12本ライブをやった後に、そのままスタジオに入ってライブのように録って。とにかくテイクを重ねて全員が納得するところまでいくという感じなんです。だから1人だけダビングするみたいなことは一切していない。もうとにかく全員で録るという綱渡り的なレコーディングでした」。そのスリリングな様子は、アルバムの全9曲の随所で感じられる。今回メンバーに加わった順番に楽器が登場する「Wanted」、縦横無尽に飛び回る上原のシンセサイザーを中心に各メンバーのアドリブが火を吹くコズミックフュージョン「Sonicwonderland」、THE PIANO PROJECTを彷彿(ほうふつ)させるグルーヴィな4ビート曲「Up」、そして、テレビゲームのエンディングを思わせるコミカルなストライドピアノが楽しめる「Bonus Stage」まで、メンバーそれぞれの個性や音楽的駆け引き、そして、その時の気分までもが録音に反映され、有機的で躍動感あふれるサウンドに仕上がっている。そしてもう一つの注目すべき楽曲が、Mister Barringtonのメンバーとしても活動するUK出身のシンガーソングライター/キーボードプレイヤーのオリ・ロックバーガーがゲスト参加したボーカル曲「Reminiscence」だ。上原とオリは、バークリー音楽大学院時代の音楽仲間で、およそ20年にわたり交流が続いている。彼の音楽の「いちファン」と言う上原は、歌詞を2人の共同作業で書き上げた。「とても大切な人に送る歌にしたいということと、その大切な誰かはもう会えない人か、会いづらい人か、なかなか会えないので思い浮かべながら送る歌にしたい。その関係性としてはロマンチックな2人ともとれるし、もしかしたら家族かもしれない、友人かもしれない。いろんな視点に置き換えられるように歌詞を書きました」 2003年のデビュー以来、上原ひろみはソロの他、Hiromi's Sonicbloom、THE TRIO PROJECT、THE PIANO PROJECTなど、新鋭ミュージシャンからベテランまで、さまざまなメンバーとプロジェクトを組んで自らの音楽を追求してきた。彼女は音楽について、「永遠の片思い。だから追いかけているんです」と言う。Hiromi’s Sonicwonderという仲間と共に船出した、上原ひろみの新たな冒険は、まだ始まったばかりだ。

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