Beethoven: Symphony No. 9 & Choral Fantasy
フライブルク・バロック管弦楽団, ヴェルナー・ギューラ, クリスティアン・ベザイデンホウト, クリスティアーネ・カルク, フローリアン・ベッシュ, ソフィー・ハームセン, チューリヒ・ジングアカデミー, パブロ・エラス=カサド


ベートーヴェンの燃え上がるような大作『第九』と現代の大規模なオーケストラとの組み合わせは、ともすると激しいオーバーヒートを起こす危険をはらんでいる。しかしPablo Heras-Casadoは、指揮者の意図を敏感に察知するフライブルク・バロック管弦楽団から、力感にあふれながらもしなやかな響きを引き出すことに成功。この名作を“ロマン派の夜明け”という元来の立ち位置に戻し、“端から端まで迫力満点”という楽曲自体が誤解されかねない演出を排除して、綾なすオーケストレーションの透明感を復活させた。第1楽章のすべり出しでリスナーの耳を引きつけるCasadoは、第2楽章では手綱を短く持つかのような繊細な指揮でオーケストラを巧みに操りながら迫りくる不安を表現し、音楽史に輝く不朽の名曲である第4楽章「Ode to Joy」には最大限の優雅さと歓喜を均等に詰め込んだ。ピアノと合唱と管弦楽という珍しい編成による作品で、『第九』の源流ともいわれる『合唱幻想曲』は、勢いのある合唱やオーケストラとの相性も抜群のクリスティアン・ベズイデンホウトによる精妙で輝くようなピアニズムによって、夢のような仕上がりとなっている。