Bach

Bach

バッハの音楽は、他のどの作曲家の曲よりも多くピアノのために編曲されている。バロック時代に活躍したバッハは、形式的な構造を駆使しながら、洗練された和声感と旋律創作の技巧をどの作品にも発揮して作曲した。実際にどのような楽器であっても質を損なうことなく適応させることを可能にしたのは、このような理由であると思われる。 アレクサンドル・タローは、美しい多くの作品を収録したこのアルバムで、思慮深く繊細なピアノ編曲によってバッハを現代の聴覚感性と調和させ、もともとオルガン、リュート、チェンバロ、バロック・フルートといったあまりなじみのない音色のために作られた音楽を聴く楽しみを、より豊かなものにしてくれる。 25曲もの演奏を通じて、タローはリスナーをバッハをめぐる旅へといざなう。有名な曲とあまり知られていない曲の両方を取り上げながら、すべてがピアニストによって垣間見るバッハへの視点であふれている。演奏される機会の少ない『フルート・ソナタ第2番 変ホ長調 BWV1031』の「Siciliano」は、バッハの最も美しい旋律の一つとして明らかになり、そしてまたタローは『ヨハネ受難曲 BWV245』の苦悩に満ちた第1曲の力強さを、ともかくも余すことなく伝える。容赦のないクレシェンド、そしてコラールの導入部に達するまでサスティンペダルを踏み続けるなど、タローがいかにして教会の濁った響きを見事に擬似的に作り出しているか、聴きどころだ。 ピアノへの編曲の中には、オリジナルの鍵盤楽器のための作品もちりばめられており、例えば『9つの小プレリュード』集に収められた「前奏曲第1番ハ長調 BWV924」は、43秒の中に驚くほど洗練されたハーモニーが彩りを加える。他にも『無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013』の「Allemande」で、タローは優れた技術と判断力、そしてその美しさを引き立てる確かな目を持って、暗示するハーモニーを増補している。

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