

「温かい曲がそろったアルバムになりました」。Omoinotakeの藤井怜央(Vo/Key)はメジャーサードアルバム『Memorabilia』についてApple Musicに語る。“記憶すべきこと”や“思い出の品”を意味するタイトルを掲げた本作には、メジャーデビューから月日を重ね、少しずつ変化していった3人の心情が反映されていると藤井は明かす。「これまでは自分たちが思うことにフォーカスした楽曲が多かったけど、だんだん『聴いてくれる人にとって自分たちがどうありたいか』という方向にシフトしていった。『Memorabilia』は、その思いに寄り添う言葉を探していたら出会った言葉。たったワンフレーズだけでもいいから記憶に残り、一生のお守りにしてもらえるような作品になったらいいなと思って名付けました」 彼らは2026年3月、初の日本武道館公演を成功させた。その公演では、彼らと同郷である島根出身のバンド、Official髭男dismの小笹大輔(G)がサプライズで登場し、コラボレーション楽曲「ペトリコール」を披露。歌詞を手掛けた福島智朗(B)は制作過程を振り返る。「僕らは中学時代、同じ時間を過ごした仲間。曲作りはメンバー3人と大輔で集まって、当時よく聴いたアルバムを聴き返すところから始めました。Omoinotakeはデビューするまで時間がかかり、苦労も多かった。その間自分を支えてくれたのは、大輔たちと『音楽でやっていけるかな』って、一緒に夢を見ていたあの頃の記憶でした」。「ペトリコール」とは、雨が降る時に地面から立ち上る独特の香りのこと。雨の多い島根で過ごした青春時代と今を重ね合わせた言葉たちが、静かに心へ染み込んでいく。 いくつもの夢をかなえてきた3人だが、複数の楽曲に“灰色”の情景が描かれてもいる。福島が「どこまで行っても、ずっと渇望する感覚はついてくる。その感覚の色」と思いをこぼすと、冨田洋之進(Dr)が言葉をつなぐ。「日本武道館公演を経て思うのは、僕の灰色の気持ちに色を付けてくれるのは、自分たちの音楽を応援してくれる人たちなんだなってこと。だからこれからも感謝を込めて、最大限の力を使って感動を届けたい」。表現者としての決意を新たにした3人に、ここからはいくつかの楽曲について解説してもらおう。 IGNITION 藤井:「FLASHBULB」をアルバムの冒頭に置きたかったけど、最初に耳に入るサウンドは、まだ誰も聴いたことがない新しいものにしたくて。そこで「FLASHBULB」につながるオープニング曲を作りました。 FLASHBULB 福島:一瞬の記憶が脳裏に焼き付く“フラッシュバルブメモリー”という心理学用語から着想を得ました。青春時代の一瞬って、まさに一生胸に焼き付いてる。夏に汗でシャツが体にへばりつく感触とか、放課後、みんなでダッシュでチャリをこいで楽器屋へ向かった時の後ろ姿とか。そういう一つ一つの記憶が、そのまま曲になっていきました。 ペトリコール(feat.小笹大輔) 藤井:中学生の時、エモアキ(福島)や(小笹)大輔と一緒にメロコアやエモ、スクリーモをずっと聴いてました。当時僕はドラムだったけど、Omoinotakeを結成してピアノボーカルになってからは、編成上なかなかそういう音楽をやれなくなっていて。その反動もあってか、今回はするするっと曲が生まれました。 冨田:実は僕、これまでこういうサウンドをほとんど通ってこなくて、自分の引き出しを必死に開いてトライしました。結果的に右足だけじゃなく左足もどんどん使ってバスドラムを踏むようになって、すっかりハマっちゃいました(笑)。 Lovita 冨田:結成して2年くらいの時に作った曲のリアレンジ。この曲は今やっても遜色ないだろうし、リアレンジすることでさらに良くなることが分かっていました。ちょっと「青くせぇな」って照れくさい気持ちもあるけど(笑)、当時の歩みを改めて肯定できたというか、自分たち自身がすごく勇気をもらえた感覚があります。 ひとりごと 藤井:ドラムから曲を作ることがあります。この曲では2番のAメロとBメロで、淡々としつつも、ドラムが少しだけうごめく絶妙なバランスにしたくて。それをドラゲ(冨田)がすごく良い形でくみ取ってくれて、そのやりとりもすごく楽しかった。 冨田:ドラムが少しでも揺れたら悪目立ちしちゃうから、かなり繊細で大変な曲。レオ(藤井)は元ドラマーだから、曲を受け取った時に「あ、このリズムがやりたいんだな」っていう意図がすぐ分かるし、そこは第一に考えて叩くようにしています。 Memorabilia 福島:アルバムタイトル曲として総意を込めて、歌詞を先に制作しました。そもそも「Memorabilia」という言葉自体、すごく根本的で大きなテーマだと思う。だからこそ、聴く人にどれだけ想像してもらえるか、自分の日常と重ね合わせて自分ごとのように思ってもらえるかを大事にしたくて。あえてすごく身近な、小さな出来事から書き始めていきました。