人生

人生

「僕らのストーリーが絶対に一番面白いと思っている」。SUPER BEAVERの渋谷龍太(Vo)は、バンド結成20周年を経てリリースするフルアルバム『人生』について、Apple Musicに語る。本作のタイトルを考案したのは、すべてのソングライティングを手掛ける柳沢亮太(G)。「人生」という大きな言葉が本当にベストなのか、メンバー間で話し合いを重ねたという。「もちろん、僕も『これが人生です』なんて言うつもりはなくて。人が生きるということを、もう一度丁寧に歌えたからこそ、このタイトルを提案しました」 柳沢にインスピレーションを与えたのは、渋谷がライブのMCで観客に向けて放ち続けてきた、「あなたの人生が音楽になる」という言葉だった。彼らはかつてメジャー契約を打ち切られ、地道にライブを重ねてはい上がってきた過去を持つが、バンドの活路を開いたのは、観客一人一人から受け取るパワーだったと渋谷は明かす。「ステージでは4人が矢面に立つし、僕も先頭を切って旗を振っているつもりだけど、そこに呼応してくれる人の力をそのまま自分たちの力に変換できたら、これほど強いことはない。だからライブに来てくれるみんなが、場の空気を一緒に作る当事者であってほしい」 周囲の人々に力をもらって、そのたびにどんどん強くなっていく。そんなドラマチックなストーリーを現在進行形で体現できている自覚が彼らにはある。泥臭いキャラクターこそ、この時代における唯一無二の武器だと誇る彼らは、本作を携えて自身初となるドームツアーのステージに立つ。熱い勝負を懸けた本作について、ここからは渋谷龍太と柳沢亮太の2人に、いくつかの楽曲を解説してもらおう。 希望 柳沢:このアルバムの中で、一番最後にできた曲。改めてアルバムを作るにあたって、この作品ならではの顔になる曲を作りたいと思ったのがシンプルなきっかけでした。でも、いざ完成してみたら、これがあることで他のいろんな楽曲が互いに作用し合っていくような、意味のある曲になったと思います。 クライマックス 柳沢:サッカー番組のテーマソングとして、言葉もサウンドも、闘志が湧き上がってくるものを意識しました。世界規模の試合に自分たちを重ね合わせるのはおこがましいかもしれない。それでも、僕らが歩んできた道にも思い当たる節があります。勝負の瞬間の盛り上がりも、悔しさも、次へ向かう気持ちも、僕らのストーリーとすごくリンクする。自分の人生に置き換えられるドラマがたくさんあったからこそ、その熱を素直に曲に落とし込めました。 主人公 柳沢:基本的には、まず僕が最初のデモを作って、細かいフレーズはそれぞれのパートに任せるのがいつもの流れ。さらに近年はサウンドプロデューサーの河野(圭)さんが入ってきてくれたことによって、「こういうアプローチをやりたいんだけど、自分だけでは表現しきれないな」という部分を、引き上げてもらっています。そのおかげで自分が頭の中でイメージするフレーズが、より高い解像度で具現化できるようになり、アレンジがどんどん洗練されてきていると思います。 アプローズ 渋谷:歌詞が詩的で、音楽的。僕らはもがいた時期が長かったので、ここにつづられている感情はすごく身近なものだけど、柳沢は聴き手の心の奥を深くうなずかせる言葉を書くのが本当にうまい。僕の声質は、陽よりも陰寄りで、どちらかというとシリアスな声なので、この曲は表現の仕方をすごく考えました。 夏と跡形 柳沢:夏はイベントがたくさんあって楽しいけど、そこはかとなく感じる寂しさもある。それを歌にしたいと思って書いた曲です。渋谷はその空気感の表現がやっぱりものすごく上手で。わびしさや、どこかむなしい感情を完璧に表現し切っている。歌録りの時に「渋谷はやっぱり歌がうまいな」って(笑)、そう思ったのを覚えています。 生きがい 渋谷:何が幸せかって、それはやっぱりライブにすべてがある。そこでは一人一人がこれからの日々をどう生きようか決意した瞬間を目の当たりにできる。もちろん、さまざまな事情でライブに来ることがかなわない方がいるのも百も承知の上です。その人たちも含めて、それぞれが歩んできた人生を一つも無駄にしたくないという気持ちが強い。それがSUPER BEAVERという一点に集約されて、さらに大きな波へと変化していく。よくファンの方が「力をもらいました」とか「明日からも頑張れそうです」って声をかけてくれますが、「マジでそれ、俺らのせりふです」って感じです。 告白 渋谷:「聴く人が身近にいる人のことを思い浮かべてくれたらいいな」と思いながらレコーディングに挑みました。僕ら自身、長い時間を共にしてきたからこその関係性に気付ける年齢になってきている。若い子たちにとっては、この先訪れる未来の話に聞こえるかもしれないけど、その関係性のきっかけとなる地点にいることは間違いないので。それぞれの“今”と重ねて受け取ってもらえたらと思います。