

1991年のデビュー以来、レゲエ/ダブをベースにしながら、まるで汗臭くないサウンドとリリックで独特な存在感を放っていたフィッシュマンズ。彼らが1995年に発表した本作は、1994年のツアーのライブ音源を “もう1人のメンバー” と言われた奇才エンジニアの ZAK がスタジオで大胆にエフェクトを加えて仕上げた “ハーフ” ライブ・アルバムだ。ライブならではの高揚感は保ちつつも、MCや歓声は極力カットして、アルバムとしての統一感を持たせたクールで不思議な作品になっている。比較的シンプルなサウンドだった初期と、実験的で浮遊感あふれるダビーな世界を展開する後のキャリアの分岐点となったようなサウンドで、 “チャンス” “いかれたBaby” “ひこうき” など、初期の代表曲をその後につながるサウンドで聴けるという意味でもレアな作品だ。優しいようでいて、スキを見せるとズバッと胸を抉ってくる佐藤伸治の言葉と声は、天使の囁きのようでもあり、愛すべき堕天使の危険な誘惑のようでもある。後に多くのアーティストに影響を与えたフィッシュマンズが、そのオリジナリティを爆発させる準備を整えた貴重な時期がパッケージされている。