

「それが想像であれ過去の経験であれ、誰かの瞳をのぞき込み、そこに映る物語を異なるレンズを通して見る。そんな作品のイメージが本当に気に入りました」。台湾を拠点に活動するシンガーソングライター、Julia Wuは、日本を代表するトラックメイカー/プロデューサーのSTUTSとのコラボレーションEP『With U』についてApple Musicに語る。2020年、STUTSが審査員を務めた台湾の音楽アワードでJuliaの歌声に強く引かれたことをきっかけに、両者は時間をかけて親交を深めてきた。 「Juliaとは僕のアルバム『Orbit』に収録されている「World’s End」という曲を一緒に作って以来、いつかまとまった作品を作れたらいいなと思っていて。2025年の4月と11月に僕のスタジオに来てもらい、いろいろ話し合いながらセッションしました」とSTUTSは制作過程を振り返る。「結果的に恋愛がメインテーマになりました。恋人と一緒に過ごす幸せな時間、出会い、後悔など、それぞれの曲で色んなストーリーがあります。その中で“With U”という言葉がどの曲にも通底していたのでEPのタイトルにしました」。ミディアムバラードの「Eyes」で幕を開ける本作は、STUTS初の2ステップチューン「Tokyo Lights」、タイのシンガーソングライターであるPhum Viphuritを迎えた「Night Drive」、ラッパーのDaichi Yamamotoをフィーチャーした「With U」と、サウンド面においても各曲のテーマに呼応するバリエーションに富んだ内容になっている。「メロディとアイデアが驚くほど自然に、そして直感的に浮かんできて、限られた時間の中で自分たちの創造力を最大限に押し広げることができました」。Juliaがそう語るように、自然体が多彩な音楽性に結実した本作について、ここからは2人に各曲を解説してもらおう。 Eyes STUTS:2025年の4月にJuliaとセッションした時、この曲の原型ができました。最初にJuliaが鍵盤を弾いて出てきたフレーズをループさせて作るという感じで、トラックも2人で作った感が強い楽曲です。イントロとアウトロのピアノは自分が弾いてそれに合わせてJuliaが歌ってくれました。歌詞はスタジオのベランダでJuliaがひたすら書いていたのですが、その時になんとなく撮った写真がいい感じだったので、ジャケットに使いました。 Julia:このビートは数か月前にできていたのですが、まだメロディは決まっていませんでした。ある日、改めて新鮮な気持ちで聴いてみたら、私は思わず目を閉じてハミングし始めたんですが、幸運にもそれをSTUTSが携帯電話で録音してくれていました(しかもファーストテイクでした!)。それがなければこのメロディも忘れていたでしょう。ボイスメモのイントロがあまりにもぴったりだったので、そのまま最終バージョンとして採用しました。 Tokyo Lights STUTS:JuliaとEPを作るにあたって、2ステップ的な1曲が入ってたらいいなとふわっと思っていて、いい感じのトラックができたので、11月にJuliaがスタジオに来た時に聴いてもらいました。とても気に入ってくれて、すぐに原型が出来上がりました。テーマはクラブでの出会い、光が瞬いているイメージを伝えて、フックの歌詞やメロディは2人で一緒に考えました。ボーカルチョップはJuliaのアカペラをMPCでチョップして作りました。2ステップのボーカル曲を作ったのは初めてでしたが、とても気に入ってます。 Julia:この曲は、STUTSがそれまでに取り組んでいたビートとはまったく異なるジャンルのものでした。課題はメロディを考え出すことよりも、曲の雰囲気に合ったキャラクターになりきって、ぴったりハマるボーカルを実現すること。テンポ、トーン、アティチュードのすべてをつかむまでには、時間と労力が必要だったけれども、私たちは最初からこの曲が大好きでした。 Night Drive STUTS:2年前ぐらいにJuliaがアルバムでPhum君と僕と作りたいと言ってくれてて、その時から温めていた楽曲です。元のトラックはCMのために作ったものだったのですが、その時から歌ものにできたらいいなという構想がありました。自分のプロジェクトで使っても大丈夫とのことだったので、Juliaに送ってイメージを伝えたらすぐにフックとバースを作ってくれました。その状態でPhum君に送って、「Kアリーナ横浜の単独公演『Odyssey』でやりたいんだよね」と話したら、間に合わせてくれました。トラックに対して2人それぞれのアプローチが違う感じがすてきでした。間奏のサックスソロは、ライブリハーサルの時の武嶋 聡さんのソロが最高だったので、その音源をサンプリングさせてもらい、レコードからのサンプリングっぽい感じに仕上げました。JuliaもPhum君も住んでるところは遠いけど、いろんなことを話したりすてきな瞬間を共有できた友達なので、3人でこうやって曲が作れてとてもうれしいです。 Julia:これは少なくとも2、3年前から取り組んでいたトラックです。最初にSTUTSがシェアしてくれて、私は妹にこの曲に参加して一緒に書いてほしいと頼みました。私たちはビートを聴いた時、もっとポップな曲にできると思ったし、愛する人たちと永遠に一緒にいたいというテーマを込めたいと感じました。制作に長い時間をかけたので、リリース前にSTUTSの単独公演でPhumと一緒にこの曲を披露できたことは、私たちみんなにとって本当に特別な瞬間でした。 With U STUTS:この曲も「Eyes」と同じく2025年4月にセッションした時に原型ができました。その時に1バース目とフックのメロディが出来上がったのですが、2バース目をラッパーに頼みたいなと思い、Daichi君にお願いしました。11月に3人で僕のスタジオに集まり、なんとなく寒い時期の晴れた日に公園で2人で散歩している情景というイメージがあったので、それをみんなに伝えて、いろいろ歌詞のアイデアを出し合ったのもいい思い出です。その後Daichi君が自分のパートを作ってくれて、何回かやりとりして今の形になりました。Daichi君の声が乗った時に世界観がさらに広がった気がして最高でした。今まで自分が作ったトラックで一番シンプルに仕上げたかもしれません。ワンループのトラックでJuliaとDaichi君の歌とラップを引き立たせるのに徹して、アレンジとミックスを仕上げました。 Julia:Daichiがスタジオに会いに来てくれたのは、レコーディングの3日目のことだったと思います。以前STUTSから紹介されて彼と彼の音楽のことは知っていましたし、そのヴァイブスがとても好きだったので、一緒にこの曲に新たな色彩を加えることができてうれしかったです。滞在中は天気に恵まれて、午後の淡い黄金色の色合いや、秋の赤褐色など、視覚的なイメージを思い浮かべながら曲作りをしていました。そして、愛する人たちがそばにいる温もりを想像することで、この曲で語るべきテーマがより鮮明になりました。