

30年を超えるキャリアを通じてさまざまなスタイルを実験してきたベックだが、彼の本質は何よりも、老成した魂を宿す吟遊詩人だ。2026年のバレンタインデーに贈るミックステープとしてリリースされる本作は、カバー音源7曲とオリジナル曲が1曲収録され、そのうち2曲が未発表という全8曲のミニアルバムで、彼の伝統主義的な側面を、レコード箱をあさるような折衷的センスを損なうことなく際立たせている。「Can't Help Falling In Love」と「Your Cheatin' Heart」がエルヴィス・プレスリーとハンク・ウィリアムスへの敬意を十分に込めたオマージュになっている一方で、ジョン・レノンの1970年のソロ曲「Love」には感情豊かでスケール感のあるアレンジを施し、ダニエル・ジョンストンのローファイな「True Love Will Find You In The End」では徹底的に削ぎ落した表現を極めるなど、独自の解釈も見せている。