Eternal Fantasy

Eternal Fantasy

「一つのジャンルにどっぷりと浸ってみると、とても豊かな気持ちになります」。村治佳織は約7年ぶりのアルバム『Eternal Fantasy』について、Apple Music Classicalに語る。2018年に映画音楽に特化したアルバム『シネマ』をリリースした村治が本作で取り上げたのは、『ポケットモンスター』や『ファイナルファンタジー』をはじめとする人気ゲームのための音楽だ。「今回もクラシック作品とゲーム音楽のトラックを混ぜず、ゲーム音楽の世界に浸ろうと自然と思えました。映画音楽の歴史が約100年。その後を追うようにして生まれたゲーム音楽の歴史も30〜40年。黎明(れいめい)期を越えてこれから発展期、円熟期へと向かうことでしょう。ギターと共にゲーム音楽の海に飛び込んでみるのは今だ!という直感に従いました」。また本作は、彼女が以前から抱いていた「リラックスミュージックのアルバムを作ってみたい」という思いを形にしたものでもある。「“ながら聴き”を想定して書かれたゲーム音楽は、その私の願いにもぴったりだと思いました」 「アルバム名は、1曲だけ忍ばせた私のオリジナル作品のタイトルをアレンジして決めました」と村治は続ける。その楽曲「Eternal Fantasia」は、奈良の薬師寺からインスピレーションを受けて書かれた。1,300年以上の歴史を持つこの名刹(めいさつ)と同じように「このアルバムも現代の人々、そして未来の人々にまで届きますように」と祈り、『Eternal Fantasy』と命名したという。「永遠、幻想、そのどちらもゲームの世界と相性の良い言葉でもありますよね」。ここからは、村治佳織自身による各曲の解説と共にアルバムを楽しもう。 Tifa’s Theme [From "Final Fantasy 7”] このアルバム内のゲーム音楽の中で最初にコンサートで演奏したのがこの曲。MCで「『ファイナルファンタジー』の曲を弾きます!」と言ったら何人かのお客さまの表情が変わったのを覚えています。その反応を肌で感じ、今、ゲーム音楽を弾くことはとても意味のあることなんだ!と思い、レコーディングに向けてもすごく弾みがつきました。  Zelda's Lullaby [From "The Legend of Zelda"] 2回繰り返される美しいメロディがアレンジの妙により、ギターの低音から高音までの美しさも感じていただけるようになっています。お願いしたすべてのアレンジャーの皆さまのアイデアに惚れ惚れしています。  Not Tomorrow [From "Silent Hill"] ビートルズの「イン・マイ・ライフ」の間奏部分のように耳に残るものを作ってみたいと思ってイントロはオリジナルで作りました。ライブでは「戦場のメリークリスマス」と対にして弾いたら美しい流れになりそう、と夢想しています。  The Dragonborn Comes [From "Skyrim (The Elder Scrolls V)"] “ゲームから離れて音楽だけ聴いても十二分に楽しめる"良い例の一つがこの曲かなと思います。音楽を聴いただけで壮大なゲームをした気分にもなってしまいます。強さのある部分から、ぱっと教会内のステンドグラスから差し込む光を思わせる音世界に移る瞬間もとても好きです。  The Last of Us Theme [From "The Last of Us"] 収録曲どれもが名アレンジだと思っていますが、これもまさに名アレンジ。ギターデュオ、合わせて12本の弦が織りなす音の森。飛行機の中で『THE LAST OF US』のドラマを観て、ドラマや映画にまでなってしまうゲームはすごい、とシンプルに感じ入りました。主演のお二人の演技も本当に素晴らしい!  Zanarkand [From "Final Fantasy 10"] 植松伸夫さんの生演奏を拝聴したくレコーディング数か月前に、こっそりとライブに伺いました。優しくユーモアのあるお人柄も感じ取れ、生演奏にも感動しました。言葉でうまく説明できませんが、客席の皆さまも普段クラシックのコンサートでお目にかかる方々と何かが違いました。そういう日々の体験は演奏にも自然と生かされていると思います。  Nate's Theme [From "Uncharted Series"] たった一枚の楽譜から想像を膨らませて、どこまで豊かな音世界を作っていくか、ストーリーを作っていくかの面白さをこの作品からあらためて感じました。イントロではギターの⑤&⑥弦が力強く響きます。  Priscilla's Song (The Wolven Storm) [From "The Witcher 3"] オリジナルの映像を観たとき、これはギターにぴったり過ぎる!弾きたい!と即思いました。原曲の美しい歌声をギター1本でどう表現するか。オリジナルのニ短調のままでも、もちろん素敵だと思ったのですが、切なく響くロ短調の曲もこのアルバムに入れたいなと思い、アレンジャーさんにお願いしました。  Eternal Fantasia 「アルハンブラの思い出」「暁の鐘」「一億の祈り」など、トレモロという技法が使われている曲を弾くことは常に私の大きな喜びです。クラシックギターの良さを本当によく表せて、人々の琴線に届くものだと思っています。右手の小指以外の4本の指を連続して動かすトレモロ奏法、この曲で堪能していただければと思います。   Jigglypuff's Lullaby [From "Pokémon"] 人さまとお話ししているとき「プリンのうた」とお伝えして、すぐメロディをハミングしてくださる場面が何度かあって、わぁ、真のゲームファンの方だ!とうれしくなります。このアルバムを通して、私も各ゲーマーの方々の音楽に対するお話をお聞きできるのがとても楽しみです。  Everything's Alright [From "To the Moon"] 『スーパーマリオブラザーズ』は何度かプレイしたことがありますが、基本的に我が家のゲーム好きは弟一人。でもこんなに素敵な歌詞とメロディに彩られたゲーム、プレイしてみたいです。長めのお休みが取れたら、数日ゲームをしてみます。   Dearly Beloved [From "Kingdom Hearts"] アルバム後半、より癒やし、明るさ、優しさを意識して曲順を考えました。寝る前にアルバムをお聴きいただく場合は、もうこのトラックに差し掛かるころには夢の世界…かもしれません。それでもいいのです。夢の世界も音楽が彩りを添えていきます。  Waltzing in the Rain [From "Sky"] ギターデュオ✕フルートという編成は、これまで歩んできた演奏家人生の中で初めて経験しました。この編成を思いついたとき、また“初めて”に出会えたとうれしくなりました。“音楽上の家族たち”との演奏をお楽しみください。  Overture [From "Stardew Valley"] サンタクロースにゲーム機器をお願いする弟の姿を覚えています。そんな弟も今では二児の親。そしてこの曲を弾くことになってさっそくこのゲームを購入してプレイし、さらには姪っ子たちもプレイしたそうです。私にとってゲーム音楽は、ゲーム好きの小さな弟を見守る姉の気持ちをいつでも思い出させてくれるものでもあります。  Kakariko Village [From "The Legend of Zelda"] 映画に置き換えると、この曲はスタッフクレジットがスクリーンに映されているときに合いそうです。このアルバムもイギリス、日本、さまざまなスタッフの方々のサポートやアイデアをいただいて形になりました。“リスナーさんの中にある感謝の気持ち”にもアクセスできる曲でありますように。  Liara's Theme [From "Mass Effect 3"] 深い思いを持って、このアルバムのギターソロの最後の曲としてこの曲をレコーディングしました。この星に生まれ落ちてから去っていくまでに出会えるあらゆる生き物、音楽、場所、物の存在に感謝します。そして自分の生命に感謝します。深い思いを受け止めてくれる曲です。