

かつてMachine Gun Kellyとして知られたアーティストが7作目のアルバムの予告映像を公開すると、そのナレーションに世界が驚いた。「『lost americana』は、アメリカンドリームの個人的な発掘であり、失われたものを探しに出る旅だ」。その声は、なんと本物のボブ・ディランだ。映像には、mgkがタバコを吸ったり、バイクに乗ったり、ラスベガス・ストリップを歩いたりする姿が映し出され、それに乗せてゆっくりと語るのは、まさに御年84歳のレジェンドその人だ。「このアルバムは、再発見を求める人々、つまり夢想家、漂流者、反抗者に贈るラブレターだ。忘れられた場所をサウンドで描いた地図であり、再発明の精神への賛歌であり、アメリカの自由の真髄を取り戻す探求でもある」。この声にはAIではないかと疑う人もいたが、単純にボブは彼のファンなのだ(2025年初め、脈絡もなくmgkの2016年のパフォーマンス映像を自身のSNSに投稿している)。 35歳になるmgkは、クリーブランドのショッピングモールでミックステープを売り歩く気骨のあるラッパーから、ポップパンク・リバイバルの象徴的存在へと見事に転身を遂げたキャリアを通じて、再発明の精神を自ら体現してきた。2020年の『Tickets To My Downfall』と2022年の『mainstream sellout』では長年くすぶっていた不安をblink-182風のリフにつぎ込んだのに対し、『lost americana』での彼はジェームズ・ディーンになりきって、砂漠を貫く2車線のハイウェイを時速135マイルで飛ばし、手巻きタバコを立て続けに吸いながら、あてもなく先を急いでいく。ブルース・スプリングスティーン風の「outlaw overture」では「Take me somewhere cheap / Where the livin’ is easy / Out of all their reach / Set my spirit free(金のかからないところに連れて行ってくれ/暮らしが楽な場所に/奴らの手の届かない場所で/俺の魂を解放してくれ)」と歌い、「cliché」では恋人をそそのかして、こんなつまらない町は捨ててラスベガスで結婚しようと誘う。「sweet coraline」ではThe Strokesを彷彿(ほうふつ)とさせ、「starman」ではサード・アイ・ブラインドの「Semi-Charmed Life」を引用し、「indigo」や「treading water」ではヒップホップのルーツにも立ち返る。そして、その「treading water」では波乱の一年を経て歩んできた贖罪(しょくざい)への長い道のりを赤裸々に語っている。