Straight Line Was a Lie

Straight Line Was a Lie

The Bethsの4作目となる本アルバムの大きなテーマは、直線的な進歩など幻想に過ぎないということだ。「大変なことが連続して起きて、すべてが徐々に良くなる一方ってわけにはいかないこと、そして人生はもっと循環するというか、常に浮き沈みを繰り返すものだってことに気が付いた」と、ボーカリスト兼ギタリストのElizabeth StokesはApple Musicに語る。「そう言うと憂鬱な考えみたいだけど、実際にはそうでもない。だからといって楽観的にもならない。ただそれが現実だっていう」 アルバム制作に先立つ数年間で、Stokesはこの考えを裏付ける困難にいくつか直面した。バセドウ病と甲状腺眼症の診断を受けた彼女は、精神面と身体面の問題に対処するためにSSRI(セロトニンを高める抗うつ薬)を服用し始めていたのだが、その薬のプラス効果が、曲作りの能力が鈍ることによって相殺されてしまっているのを痛感していた。「曲が書けなくなっていた」と彼女は説明する。「自分の中の羅針盤を失ったみたいな感じ。SSRIは私が陥っていた穴から抜け出すのにすごく役立ったけど、私の曲作りは感情に強く突き動かされるもので、直感的な反応が以前とは全く違ってしまっていた」 スランプを打破しようと、Stokesはスティーヴン・キングの『On Writing』(邦訳『書くことについて』)、ベント・フライフヨルグとダン・ガードナーの『How Big Things Get Done』(『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』)、そしてRobert A. Caroの『Working』を読んでみた。ある時期には、毎朝タイプライターで10ページにわたって頭に浮かんだことをありのままに書き出すジャーナリングに没頭したこともある。「つら過ぎたり、痛いところを突かれたり、変な感じがしたり、普段は書きたくないようなことを書き出してみた」と彼女は言う。「おかげで、そういうテーマにも向き合えるようになって、結局そこに書いたことをたくさん曲作りに使うことになった。私はこれまでもずっと感情を込めて、自分の経験に基づいた曲を書いてきたけど、今回はそれ以上に踏み込んだ感じがする。間違いなくもっと深く掘り下げた」 荒々しく切迫した「No Joy」では感覚がまひするようなSSRIの副作用に触れたり、繊細な「Mother, Pray for Me」ではStokes自身の母親との複雑な関係を吐露したりしながらも、ポップなメロディと生き生きとした軽快なインディーロックを組み合わせるという、ニュージーランド出身の4人組が得意とするスタイルは健在だ。ここからは、Stokesに全曲の解説をしてもらおう。 Straight Line Was a Lie 全体を貫くテーマを見つけた時点で、それをうまくまとめた曲がないと思った。アルバム制作のセッションの後、バスで帰宅中に携帯電話に歌って録音したのがこの曲。普段は最初と2番目のバースの歌詞が同じっていう構成にはしないんだけど、今回は循環する感じで、何度も繰り返す旅みたいな感覚がぴったりだった。 Mosquitoes この曲では主に、2023年のオークランド記念日の週末に起きた洪水で壊滅したオークリー・クリークについて歌ってる。すごく愛されてる場所で、今は2025年だけど、まだ復旧していない。遊歩道が一つも残ってなくて、少し野生化したというか、大きく変わってしまった。ある意味、たくさんの命が奪われていっているように感じられるけど、自然の営みが続いてるのは慰めになる。オークリー・クリークは破壊されたと言えるかもしれないけど、そうじゃない。まだそこにあるわけで、ただ前とは違うだけ。 No Joy いつもなら喜びを感じられるものに喜びを見いだせないことについて歌ってる。それって変な感じ。悲しいわけじゃないけど、幸せを感じることもできないなんて、ある種の苦行みたい。この曲ではそういうことが、すごく緊張感のある神経質なリフで表現されてる。すごく高ぶることも落ち込むこともなくて、すべてが中間にあるんだけど、それでも楽しく感じられるようにしたかった。何も感じられない曲にはしたくなかったから。 Metal 人間の身体の中で起きていること、そして身体に必要なあらゆる器官や機能について歌ってる。それはすごく複雑で、存在してること自体が奇跡のようなもの。でも同時に、今の私は奇妙な健康問題を抱えていて、自分の身体や脳で起きてることをコントロールできてる実感があまりない。人間の身体で何が起きてるのかを知ろうとしてみたけど、理解できなくてもどかしかった。この曲は、そんな自分に対する二つの認識の間を行ったり来たりしてる感じ。 Mother, Pray for Me 私の母との関係について歌ってる。母はインドネシアからの移民一世で、私が4歳の時にニュージーランドに移住してきた。この曲では、私たち2人の関係と、お互いを本当には理解できていないという隔たりについて、そして育ってきた環境があまりに違うんだから、歩み寄ってお互いを理解しようとする気持ちについて歌ってる。 Til My Heart Stops すごく切ない曲。私は自分から人を遠ざけてしまうと感じることがよくある。特にちょっと変な気分のときは、自分と他の人との間に壁を作ってしまいがち。大好きな人でも、よく知ってる人でも、もっと知りたいと思うような人とでも。それでも世界の一部でありたくて、他の人たちと親しくなりたくて、壁を作りたくないっていう心からの願いがある。私が経験したい高揚感が曲の終わりにあるんだけど、そこへたどり着くには闘わなきゃいけない。 Take 演奏するのが本当に楽しい曲。ちょっと慌ただしくて、勢いがある。歌詞のテーマは、突発的に破滅的な行動を想像してしまう“虚空の呼び声”で、つらいときに助けが欲しくて何かに手を出してしまうことについて歌ってる。人によって違うけど、例えば飲酒は、ニュージーランドやオーストラリアでは時に国技とも言えるくらいで、その誘惑はすごく強い。一言で言えば、コーピング(ストレスに対処する行動)がテーマじゃないかな。 Roundabout 他の曲と比べるとかなり作り込まれていて、普段よりもずっと余白がある曲になって、ちょっと怖いくらい。私たちはいつもあらゆるスペースを音で埋め尽くしたいと思ってるから。この曲で歌ってるのは、すごく長い付き合いがある人たちって、どんな一面を見せられてもずっと大好きだってこと。今とは別人みたいな頃から知っていて、これからもまた変わっていくのも分かってるから。 Ark of the Covenant これは『インディ・ジョーンズ』と絡めてある。聖櫃(アーク)を見たら顔が溶けてしまうから見ちゃいけない、みたいな。自分の頭の中に触れたくない思いがあったり、向き合いたくない自分がいたりするときがある。避けてしまうのは怖いからだけど、いざ見てみたら、それは聖櫃なんかじゃないし、実際に顔が溶けるわけでもない。大丈夫だってこと。 Best Laid Plans 最後にふさわしい楽しい曲。歌詞では、すべてを投げ出して、その感覚に身を任せることを想像してみている。実際はそんなことできないし、諦めるなんて絶対無理で、そうするべきじゃないってことも分かってる。でも時には、何かつらいことがあると、「諦めてみたらどうなるだろう?」って考えてしまうもので。もしすべてを手放して、流れに身を任せたらどうなるんだろうって。この曲は、そんな思いを気ままな空想として描いてるだけで、空想にふけった後は現実に戻って、ちゃんとやり遂げればいい。