

Morgan Wallenは、今世紀最大のブームを迎えたカントリーミュージック界で最大のスターだと言えるかもしれないが、自分が負け犬だった時代を忘れてはいない。「俺のことをよく知れば、オオカミの群れの中にいるコヨーテだと分かるはずだ(Once you get to know me, I’m a coyote in a field of wolves)」と、彼は4作目のアルバム『I’m the Problem』のラスト曲であり、密造酒の売買や真夜中の妄想を物語にした「I’m A Little Crazy」でハスキーな歌声を聴かせる。テネシー州出身で32歳になる彼は、この歌詞が特に気に入っているとApple MusicのKelleigh Bannenに語った。「これまでの人生で時には、自分が招かれざる客だと感じることがあった」と彼は認める。「俺にとっては、それがあの歌詞の意味だ。『なあ、歓迎されてないのは分かるけど、まだ食ってるし、それでも料理は出てくるんだ』っていう」 2021年にリリースされた30曲入りの2作目『Dangerous: The Double Album』以来、Wallenの過剰なまでに多作なスタイルは成功戦略となった。続く2023年の『One Thing At A Time』には36曲が収録され、アメリカではどこにいても耳にする「Last Night」を含む8作のシングルを世に送り出し、ガース・ブルックスが保持していたカントリーアルバムのビルボードチャート1位獲得週数記録を塗り替えた。そしてそれに負けじとばかりに、『I’m the Problem』は全37曲、収録時間が2時間近くに及ぶという大作になった。しかしその時間は、クーラーボックスに冷たいビールを用意してポーチでくつろぐ夏の夜のように、あっという間に過ぎていく。キャッチーで洗練されたカントリーアンセムを生み出すことにおいて、Wallenと、彼が長年共作してきたソングライターやプロデューサー陣(Hardy、Ernest Keith Smith、Charlie Handsome、Ashley Gorley、Joey Moi)の右に出る者はいない。 ウイスキー、女性、雄鹿、トラックをたたえる定番のナンバーが並んでいるが、Wallenが本領を発揮するのは自身の良心に探りを入れるときだ。例えば「Kick Myself」のような、悪習や負うべき責任を掘り下げたルーツロック調の曲では意外なニュアンスでそれをやってのける。「何も変わっちゃいない/ある意味、悪化していく一方だ(Nothing’s changed/In a way it’s getting way, way worse)」と、悪習を断っても問題はなくならないことに気付いた彼は結論付ける。依存症や誘惑のテーマは「Genesis」でも続き、Wallenはこの曲をいつものようにフックから書き始めるのではなく、聖書の創世記をキャッチーでクールなものに仕立てるというチャレンジを楽しんだという。「俺の頭にあったのは、『どうすれば創世記を曲にできる? どんな意味になる? それを陳腐に聞こえないようにするにはどうすればいい?』ってことだった」 2020年代のジャンルを超えたカントリースターともなれば、勝利の喜びに浸っていると思われがちだが、アルバム『I’m the Problem』を満たしているのは心の痛みだ。失恋ソングの「I Got Better」はひときわ辛口だが、シングルになった「Lies Lies Lies」や「Just In Case」のようにウイスキーにどっぷり浸った後悔の味が強い曲が多い。「このアルバムにはいろんな感情が詰め込まれてると思う」と彼は言う。「幸せを歌うのが得意じゃないのはいつものことだ」とも。しかし最も重要な感情を歌っているのは、彼が初めて幼い息子のために書いた「Superman」で、Wallenは息子に自分は不完全だと告白する。「いつも救ってあげられるわけじゃない(I don’t always save the day)」と彼は歌う。「でもお前のためなら、いつだって努力してみせる(but you know for you, I’ll always try.)」 「いろんなことをやってみようとしていた」と、この極めてパーソナルな曲について彼は言う。「息子に自分の欠点を伝えるだけじゃなく、アドバイスもして、俺が守ってやるんだってことも分かってほしかった」。そう、世代を代表するカントリーの巨人にも感情があるのだ。