Lotus

Lotus

Little Simzは『NO THANK YOU』(2022年)から2年半の間、その続編を4回も書こうとしたが、うまくいかなかった。外から見れば、このロンドン出身のアーティストは絶頂期にいた。画期的な4作目のアルバム『Sometimes I Might Be Introvert』(2021年)以来、マーキュリー賞を受賞し、グラストンベリーのステージを制覇し、英国ラップ界の実力者としての地位を確立した。けれども私生活は崩壊寸前だった。2025年、Simzが、長年の友人で過去3作のアルバムをプロデュースした共同制作者のInfloに対し、170万ポンドの融資返済をめぐる訴訟を起こしたというニュースが広まった。この裏切りは彼女に深い喪失感を与え、「Lonely」ではこう回想している。「スタジオで頭を抱えて座り/書けない音楽をどうすればいいのだろうと考えていた(Sitting in the studio with my head in my hands/Thinking what am I to do with this music I can’t write?)」 この混乱の中で、31歳のSimzは突破口を見いだし、それが6作目のアルバム『Lotus』として実を結んだ。このタイトルは、泥水の中でも力強く咲く花に由来している。本作でSimzは、かつての友人について遠慮なく語っている。ブルージーなオープニング曲「Thief」では「私の人生を知っている人が、変装した悪魔のようにやってくる(This person I’ve known my whole life, coming like the devil in disguise)」とラップする。そして、Miles Clinton Jamesがプロデュースし、ナイジェリア系イギリス人ポップスターのObongjayarと南アフリカ出身のMoonchild Sanellyが参加した「Flood」でも、不穏なムードを放っている。 しかし、「Young」では、どん底で、貧乏で、それでも生きていることについて、「リオのボトルとチキンとチップス/私をめちゃくちゃにするパンプスとエイミー・ワインハウス風の髪型で(A bottle of Rio and some chicken and chips/In my fuck-me-up pumps and my Winehouse quiff)」とポストパンク風にラップする。そして、愛と恐怖の対比をテーマにしたブームバップ調の内省的なナンバー「Free」では、「愛とは、私がペンを紙に走らせるたびに生まれるもの(Love is every time I put pen to the page.)」と、感情を解き放つような結末にたどり着く。