SOME BUDDY

SOME BUDDY

「とんでもないスピードでできました」。CLRことラランドのサーヤは、礼賛のセカンドアルバム『SOME BUDDY』についてApple Musicに語る。「前作のツアーが終わって打ち上げに向かうタクシーの中で、(川谷)絵音さんが『次のレコーディングは…』という話をされて。絵音さんにとってはそれが普通なのかもしれないけど、他のメンバーはドン引きしてました(笑)」。礼賛のギター担当であり、バンドの舵取りも担う川谷絵音(G)は、いくつものバンドを掛け持ちし、日本の音楽シーンでも指折りの多忙なミュージシャンだ。そして人気お笑い芸人であるサーヤもまた多忙を極める。必然的に、礼賛として集まれる日はごくわずかになった。「だから今回のアルバムはコンセプトを決めるというより、集まったらどんどん作ってみようという実験的なかたちでできました」 お笑い芸人/タレントとしてのサーヤと、礼賛のフロントに立つアーティストとしてのCLR。彼女はその二つの領域を行き来するうちに、次第に境界を意識しなくなっていった。今や彼女のiPhoneのメモと手書きの手帳には、笑いのネタとリリックのアイデアが入り交じっている。今作にはコントのように言葉を畳みかけるラップ曲もあり、笑いと音楽の融合を楽しんでいる様子も伝わる。「私は礼賛のメンバーとして過ごすようになってから結構明るくなったと思う」と内面の変化を明かすサーヤ。礼賛としての活動も3年目となり、音楽活動のペースも少しずつつかめてきた。「礼賛を始めたころは本当に赤ちゃんのような感覚だった。初ライブで下北沢ERAのステージに立った時は、隣にいるギターの(木下)哲さんに『これは何?』って舞台上にあるものを全部説明してもらったくらい。そこから一つ一つ踏み締めて吸収して、やっと勉強モードから楽しむスタンスになってきた」。音楽のフィールドでも本領を発揮し始めたサーヤに、いくつかの楽曲について解説してもらおう。 SLUMP スランプに陥って、絵音さんと休日課長(B)の3人でずっとスタジオに閉じこもって、日付を越えてレコーディング当日になるまでプリプロダクションをしてました。最後の最後まで悩んで、やっと吹っ切れて、「いつかのSLUMPから今グランドスラム」のフックができた。本当にスランプの中で書いたので、それを打開する瞬間からアルバムが始まると面白いかなと思って1曲目にしました。 鏡に恋して 私はもうSNSを全然見てないんですけど、とらわれている人は結構いると思います。SNSでは美的センスもどんどん変化して、カテゴライズも増えていく。イエベ、ブルベ、骨格なんちゃらとか。でもそういうのは気にせずにナルシシズム的な感覚を持ってた方が生きやすいんじゃないかと最近思う。SNSを見てもいいけど、気にすんなよって言いたい。歌詞を前向きにしっかり書けたことに自分でびっくりしているし、作れて良かったです。 GOLDEN BUDDY (feat. くるま) 芸人ですごく面白いと思う先輩は、声が変だったり、独特の間があったり、音に関わる特徴があるとすごく思います。イントネーションやテンポ感、スピードも大事で、お笑いと音は密接な関係にある気がする。学生の時からアプリを使って、フリートラックに合わせてラップする遊びをしていたので、そのノリで作ることができました。 ウラメシヤ 美容院から礼賛のゲネ(リハーサル)に行く日があったのですが、美容院を出た時に週刊誌に直撃されて、めちゃくちゃ動揺しました。ゲネに行くと、絵音さんや休日課長に「あまりにも様子がおかしい」とすごく心配されて、「直撃されて写真撮られましたわ…」とか話しながら、イライラをそのまま歌詞に書きました。これを私は“フードロス削減”と呼んでいるんですけど、すべての感情を取りこぼしなく何かしらに消化できるので、自分としてはめっちゃバランス良くできてます(笑)。 SPICY 礼賛は各メンバーがやりたいことを提案して、遊び心をもってやってます。シタールを使ったこの曲も、独特な音作りを楽しんでいるのがいいなと思います。最近は楽器隊がトラックを作ってから、私がリリックと歌メロを作る流れになっているのですが、この曲のトラックデータ名は「インド」でした(笑)。歌詞は私のSNSが炎上してたころのマインドが反映されてます。 TRUMAN (feat. RYO-Z, ILMARI & DJ FUMIYA) 礼賛がフェスでRIP SLYMEさんの「熱帯夜」をカバーして、その映像を偶然目にしたDJ FUMIYAさんからコラボレーションのオファーをいただき、交流が始まりました。歌詞のテーマは、私が一番好きな映画『トゥルーマン・ショー』。あの映画のストーリー(ある男が、自身の人生が実は全世界に向けて放送されているリアリティ番組だったという衝撃の事実に気付く)は、常に誰かに見られている芸能界のようだなと思う。RIP SLYMEのみなさんはこの業界に長くいらっしゃるのでどんなリリックを書いてくださるんだろうと楽しみにしていたら、やっぱり格が全然違うなと思いました。大人の余裕があって達観しているというか、全部乗り越えた上で全部楽しんでいる感じが、めちゃくちゃカッコいいなと思います。 フレームアウト 前作のEP『PEAK TIME』の最後に収録した「生活」のリリックで「マジなことをマジな顔して話すのはスベッてる/だからせめて音に乗せて話してる」と書いたんですけど、それを体現したのがこの曲。芸人としてこういう話をするのは気分が乗らないけど、アーティストとしてならやる意味を感じるし、楽曲にすると消化される。芸人の時はお笑いに特化して、礼賛の時はいろんな感情を扱って、うまくやりくりできているということが現れた曲です。