

「ガツンと、かますのを先延ばししてた」とCentral CeeはApple Musicに語る。リル・ベイビーと共作した逸品「BAND4BAND」を筆頭に、「Doja」「Sprinter」が全世界でヒットを記録。過去の作品タイトルにもあるように、この“ワイルド”なウェストロンドン生まれのラッパーが、シングルの成功に乗じてすぐさまアルバムをリリースしたとしても、誰も責めたりしなかっただろう。だが本人もつねづね語っていたように、シェパーズ・ブッシュ出身のラッパーという肩書だけではシーンを駆け上がるには十分ではなかった。だからこそ、待ちに待った自身初のフルアルバム『CAN’T RUSH GREATNESS』はいっそう重みを増してくる。 「最初の2作はミックステープだった」と、過去の作品について、本人は説明する。「あの当時注いだエネルギーは、ミックステープになるべくしてなるものだった。今回はアルバムを想定してエネルギーを注いだ。もろもろのタイミングもあって、アルバムという形になったんだ」。そうした意図の下、デビューアルバムは冒頭からいきなりCeeの相反する胸の内が前面に押し出される。オープニングの「No Introduction」では、名声でがらりと変わった生活をしかと受け止めつつ、同時に平穏な生活を渇望する。こうした心境の変化はアルバム全編に流れ、ドリルのビートが鮮やかな「5 Star」ではまったく異なる世界観を自由に行き来し、悲哀に満ちた「Limitless」では誰もが共感する痛みを募らせる。 陽気な出だしの「St. Patrick’s」では得意の毒舌節を炸裂しているものの、アルバムはあえてラップだけに終わらない。「Don’t Know Anymore」「Walk In Wardrobe」といった楽曲がその例で、特に後者は終盤でビートを変えるという荒業にも挑戦している。「こんな風に自分を見つめ直す形でラップするのは苦手だ」と本人は言う。「トンネルの向こうに見える光だけをまっすぐ見つめていたい。特定のことはあまり深く考えたくない」 歌詞の題材のほとんどは地元偏愛にあふれているが、Lil DurkやYoung Mikoらとのコラボーレーションを聴けば、Ceeの魅力が全世界に通じることは一目瞭然だ。とはいえ、トラップの秀作「GBP」での21サヴェージとの丁々発止は心地いい。UKラップの雄、スケプタと共演した「Ten」や、SPLIT DECISIONのデイヴと久々にタッグを組んだ「CRG」は、いい意味でまた違っている。「大衆向けの曲じゃないが」とCeeは言う。「心の琴線に触れることを狙ったんだ。俺も人間で、彼らもまた人間だということを思い起こさせる曲だよ」