Harlequin

Harlequin

2023年夏、レディー・ガガは密かに進めてきた謎のプロジェクトについてのヒントを出し始めた。彼女はそれを新作だと認め、過去の作品とはまったく違うサウンドなのだと。ファンはそれが“LG7”、つまり2020年の『Chromatica』に続く待望の7作目になるのではないかと思っていたが、2024年9月に突如「LG6.5」と書かれた広告版が姿を現した。そしてポップスターの彼女が6作目と7作目の間に放つそのサプライズリリースは、トッド・フィリップス監督の映画『ジョーカー』の、ミュージカル要素のある続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』で自身が演じるリー・クインゼル、通称ハーレイ・クインのゆがんだ視点から表現された『Harlequin』というコンセプトアルバムだと判明した。 一時的にゴッサムシティの住人を演じる俳優によくあることだが、ガガは映画の撮影が終わった後、自分が体現してきたキャラクターから抜け出せていないことに気が付いた。そこで彼女はジョーカーの恋人として歌ってアップデートしたジャズのスタンダード曲を集め、アルバムを作ろうと考え始めた。マリブにあるリック・ルービンのスタジオ、Shangri-LaでLG7と並行してレコーディングされた『Harlequin』は、映画に付随したアルバムではあるが、明らかにガガ独自のビジョンに沿った作品でもある。 ガガが最初に行ったのは、役に合わせたリー(同映画内のハーレイ・クインの愛称)の歌唱力を設定することだった。「彼女を作り上げるために、いろんなことをやってみた」と、ガガはApple MusicのZane Loweに語る。「その一つとして、映画の中での自分の声を変えてみた。それはリーの声で、すごく生々しくて、まったく飾り気がない。すごく未熟で、息遣いも正しくないっていう」。どうすればそんなことがエネルギッシュな歌声の持ち主であるスーパースターにできたのだろうか。「毎日ホアキン(・フェニックス)から死ぬほど怖い目に遭わされてたから、声が身体から抜けてしまったんだと思う」 一体彼女以外の誰が、1932年の名曲「I’ve Got the World On a String」を粗削りでスローなサーフロックとしてカバーしたり(「ザ・クランプスがフレンチの曲を作ったらどんな感じかな」)、有名とは言えない1964年のミュージカルの楽曲を1980年代のロックナンバーにアレンジしたりできただろうか。 後者の「The Joker」という曲は、もともとミュージカル『The Roar of the Greasepaint - The Smell of the Crowd』のために書かれたものだったが、現在のガガが歌うために書き下ろされたとしてもおかしくないほどだ。同じことは「人生のあらゆる出来事はショーの中でも起こり得る/みんなを笑わせることも、泣かせることもできる/なんだってあり(Everything that happens in life can happen in a show/You can make ’em laugh, you can make ’em cry/Anything can go)」と歌われる、ジュディ・ガーランドが有名にした1952年の定番曲「That’s Entertainment」についても言えそうだ。しかしアルバムをよく聴けば、ガガがさりげなくひねりを効かせているのが分かる。例えば映画『Singin’ in the Rain(雨に唄えば)』で知られる「Good Morning」の陽気な歌詞「Good morning/Rainbows are shining through(いい朝だ/虹が輝いている)」が、喜々として不吉な雰囲気を醸し出す「Bang bang, you’re black and blue!(バン、バン、お前はあざだらけ)」に置き換えられているのだ。 彼女が故トニー・ベネットと共演して私生活でも親交があったこと、そしてラスベガスでジャズの連続公演を行ったことを考えれば、ガガとこのジャンルとの親和性はかなり高いと言える。しかし、彼女は今回のような曲のアレンジは恐らくベネットには不評だっただろうと自覚していて、「トニーが嫌がりそうなことをたくさんやった」と認める。オスカーの受賞歴もある彼女はまた、このアルバムのオリジナル曲「Happy Mistake」で描かれる心理状態を掘り下げてもみせる。「音楽でも映画でも演劇でも、こういう壊れたキャラクターを女性が演じると観客の受けが良くて、拍手を送られる」と、彼女は言う。「観客は痛みの描写に拍手を送ってるわけで、それってものすごく複雑で戸惑ってしまう。あの曲はいろんな意味でそのことについて歌っています」

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