EACH TIME

EACH TIME

大滝詠一のキャリアにおいても特に華麗なサウンドと聴き応えのある歌声をフィーチャーした名作で、生前最後のオリジナルアルバム。ロングヒットした前作『A LONG VACATION』(1981年)から丸3年後のリリースで、こだわり抜いた録音作業もあり、1年以上の制作期間がかけられた。待ち焦がれたリスナーの期待度は高く、その結果、1984年3月の発表直後の週間セールスチャートで初めて1位を獲得した。これには、当時の大滝がソロアーティストとしての魅力に加え、松田 聖子をはじめとしたアーティストへの楽曲提供やプロデュースの仕事によって各方面から注目される存在となっていた背景もある。稲垣潤一への提供曲としても知られる「Bachelor Girl」、後年、映画『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』の挿入歌となった「1969年のドラッグレース」といった人気曲はあるが、アルバムとしてのクオリティを第一に考えた大滝の意志により、いわゆるヒットシングルは収録されていない。アメリカ的な前作と対をなすように、大滝が高校時代に親しんだイギリスのポップスをイメージした曲が並び、また、松本隆による歌詞はどこかメランコリックな味わいを持つ。さらには、オリジナル版では全9曲だったが、その後に再リリースされるたびに収録曲の顔ぶれやバージョン違い、および曲順などの変更が続けられた。1980年代半ばの大滝のアーティストとしてのパワーが注ぎ込まれた作品。