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「変化への興味がありました」。w.o.d.のサイトウタクヤ(Vo/G)は5作目のアルバム『あい』についてApple Musicに語る。メジャー初アルバムとなる本作で、彼らは大きな転機を迎えた。「w.o.d.の個性は本能的で野生っぽいバンドサウンド。それは今もしっかりあると思う。でも今回は、自分らの手の届く範囲で続けていくより、新しい刺激を入れて進化していく方が面白いと思ったんです」 バンドに変化を起こすきっかけとなったのが、前作『感情』の制作中にレコーディングスタジオで聴いた、プライマル・スクリームが1990年に行った初来日公演の音源だった。「プライマルは当時から同期演奏をしていて、それがめっちゃカッコよくて。大好きなバンドがやってることを俺らもやろうと思ったけど、具体的なやり方が分からないので外部プロデューサーを呼ぼうという話になった。その第一候補に上がったのがTHE SPELLBOUND/BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さんでした」。打ち込みの音とバンドの演奏を掛け合わせた同期演奏は、生のバンドサウンドを追求してきたw.o.d.にとって未知の領域だった。彼らはまず「My Generation」という楽曲の骨格となるデモ音源を中野に渡し、そこに中野がシンセサイザーやパーカッションの音色を乗せ、ミックスも手掛け、w.o.d.の新たな試みを後押しした。さらに両者はその手応えをもって「エンドレス・リピート」の制作に取りかかった。「中野さんともっと密にコミュニケーションを取って、ゼロから一緒に作りたいと思っていました。(「エンドレス・リピートで」)もう1曲やれるとなったときに、最初に中野さんにブレイクビーツのビートを組んでもらい、そこにベースのKen(Mackay)がリフを乗せて送り返し、また中野さんに展開を作ってもらい…というやり方で進め、より複雑なものができました」。w.o.d.のダイナミックな演奏と中野が得意とするアグレッシブなブレイクビーツが融合した「エンドレス・リピート」は、w.o.d.のサウンドが飛躍的に進化したことを象徴する一曲となった。 本作には、サイトウが「すごい本能的なビートになった」と語る「あばく」や、チバユウスケとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを思ってギターリフを奏でた「Take It Easy」など、バンド従来の魅力を味わえる楽曲もそろっている。このアルバムを『あい』と名付けたことについてサイトウは「最初はビートルズのアルバム『1』が英語の“I”に見えたことから始まって、その他にもいろんな意味を込めたんですけど、一番大きくあるのは“ラブ”という意味。人に対する愛、自分自身に対する愛、いろんなラブについて考えることが多く、それが全部の曲に含まれている」と説明する。その境地に至った理由として、“ロックスターは27歳で亡くなる”という伝説が意識にあったという。「自分が27歳を越えた頃、当たり前に生き続けると思っていると同時に、“あれ、俺この先どうやって生きていけばいいんやろう”と小さな絶望を覚えた時期があったんです。でも今回いろんなチャレンジをすることで、少しずつ大人になっていく自分を受け入れようとした。だからこのアルバムには、今後バンドを続け、人生を生きていく希望を探すチャレンジをした決意の曲がいっぱい入っています」