

華やいだ夜の庭園の中で、仮面を付けて踊る人々の様子を描いたヴェルレーヌの詩『月の光』に魅了されたドビュッシーは、有名なピアノ曲『月の光』のほかに、同じ詩による2つの歌曲『月の光』を遺しています。そのヴェルレーヌの異名は、“呪われた詩人”。破滅的な人生とは裏腹に、彼が遺した500編あまりの詩のなんと美しいことでしょう。その代表作として知られる作品が、1869年に発表された詩集『艶なる宴』の中の最初の詩『月の光』です。ドビュッシーを魅了したこの作品の中には、ヴェルレーヌの個性とその毒の強さが秘められているようです。