

プロデューサーの松任谷正隆はキーボードプレイヤーとしても数えきれないほどの作品に関わっている。1970年代初頭からプロとしてのキャリアをスタートさせ、やがてセッション集団のキャラメル・ママ(のちのティン・パン・アレー)の一員となり、多くの現場に参加。主にシンガーソングライターやソロシンガーの楽曲に豊かな音色を添えながら、一時期はフュージョン的なアプローチを見せたこともあった。そんな初期の仕事の一つに荒井由実(当時)のレコーディングがあり、これが2人にとって運命の出会いとなる。なお彼は幼少期からピアノを習っていたが、レッスンよりも自分だけで自由に弾くのが好きだったそうで、演奏にはそうした想像力が大いに生かされている。オルガンやアコーディオンも弾く松任谷のパフォーマンスには、テクニックの高さはもちろん、常に人間味のあるぬくもりのような感覚があり、それも彼の演奏が愛される理由なのだろう。