村井邦彦:プロデューサー

村井邦彦:プロデューサー

「ロックじゃないし、フォークじゃないし、歌謡曲でもない。だから(荒井由実の)最初のレコードの帯には『新感覚派』と書きました。そのうち誰かがニューミュージックと言い出して、それにだんだん流れていった」。自身の初期のプロデュース作である“ユーミン”のデビューアルバム『ひこうき雲』(1973年)について、村井 邦彦はApple Musicに語る。この言葉からも分かるように、プロデューサーとしての彼はアーティストたちの新しい感性に寄り添いながら共にチャレンジを繰り返し、いくつもの才能を芽吹かせてきた。時代を彩った赤い鳥の「翼をください」(1971年)やハイ・ファイ・セットの「卒業写真」(1975年)には、当時においては斬新だった都会的な感覚が息づいている。また、それまでのポップスやロック、ジャズなどの洋楽を基盤にしながら、新しい解釈を加えることで日本のポップミュージック界に革新をもたらす潮流を作り出してきた。例えばシティポップの祖として語り継がれる小坂 忠の『ほうろう』(1975年)、そして世界的な旋風を巻き起こし、テクノポップというジャンルを広めたYELLOW MAGIC ORCHESTRAの『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』(1979年)等、制作者としての村井のアプローチは、細野晴臣をはじめとしたアーティストたちの先進性を、次の時代のスタンダードとなる作品へと昇華させた。