

「僕の音楽の素は、童謡のような種類の音楽とジャズが混ざったもの」。自らが作曲する楽曲の傾向について、村井 邦彦はApple Musicに語る。父親のジャズ志向と、母親が好んだ唱歌や童謡のメロディ。この両方に触れながら育った彼は、大学のサークルでジャズオーケストラのピアノを担当しながら、作曲家を志すようになる。初期にはヒットソングとなったザ・テンプターズの「エメラルドの伝説」(1968年)、ザ・タイガースの「ラヴ・ラヴ・ラヴ」(1969年)などグループサウンズや歌謡曲を手掛け、キャリアの足掛かりをつかんだ。やがてフォークの分野まで領域を広げると、1971年に赤い鳥に提供した「翼をください」が記録的な大ヒットとなる。洗練され品格をたたえた旋律に加え、当時のフォークやロックのエネルギーを吸い込んだ力強い楽曲は、若い世代から高い支持を受けた。他にもガロ「美しすぎて」(1972年)、トワ・エ・モワ「虹と雪のバラード」(1971年)など、名曲を生み出している。ハイクオリティの音楽をビジネスに結び付ける制作者として知られる彼だが、作曲家としてもまた突出した個性と功績を誇る才能の持ち主だ。