孫盛希:フェイドアウト、フェイドイン

孫盛希:フェイドアウト、フェイドイン

Apple Music

「たまったフラストレーションや心の痛みをフェイドアウトさせて、あなたに希望をもたらしてくれる、新しい人々や物事をフェイドインさせよう」と、ソウル/R&Bシーンの歌姫、孫盛希 (Shi Shi) は、このプレイリストのコンセプトをApple Musicに説明する。「ダークな悲しい曲から始まって、最後はハッピーなムードへと移っていく」。世界から次々とひどいニュースが届く中でも、未来への希望を抱く余地は常に存在するはずだ。彼女は実生活において、どのような視点を持ち続けているのだろうか?

韓国出身で、現在台湾を拠点に活動する孫盛希にとって、パンデミックによる自粛期間は幸い転じて福となった。しかも、2つも福をもたらしてくれたのだという。「マンションを買って、やっと自分の家を持てたこと。そして、とても満足のいくアルバムをリリースしたこと。パンデミックがあったから、私は100パーセント以上の情熱で自分自身をたきつけられたんだと思う」と語る。通算5作目のアルバム『出沒地帶(Where Is SHI?)』で彼女は、女性であることや、内に潜む影の部分、そして自らの帰属意識について探求している。また、マンドポップから一転して、豊かなインディー寄りのソウル/R&Bのサウンドを開拓してみせた。このプレイリストに収録された楽曲からは、そんな彼女のインスピレーション源を探ることができる。

「Khalil Fongは、中国語で歌う曲を書く上で、私にたくさんのインスピレーションを与えてくれたアーティストで、Sesoneonや落日飛車といったバンドも、日常的に聴いている」と彼女は語る。そして、彼女と同じ韓国出身である新進気鋭のアーティストBIBIも、大きなパワーを与える存在となっているようだ。「彼女は自身のセクシュアリティを大胆に表現している。それはアジアでは簡単じゃないこと。このアルバム(『出沒地帶』)は、そういう意味でも単刀直入と言える」。また、プレイリストの曲の中では、スムーズに流れるソウルフルなメロディとディスコ調のギターが特徴的なジョン・メイヤーの「New Light」がとりわけ輝きを放っている。「私の最終的なゴールは、グラミー賞のステージでジョン・メイヤーと共演すること」と、彼女は語る。

彼女にとってパンデミックの大きな欠点は、海外にいる家族を新年に訪問できないことだが、それ以外ではアクセルを踏み続けるという。「2021年にはソロライブを行う予定。それに、次のアルバムのアイデアも考え始めたし、EPもできるかも」。最後に、母国を離れて大胆にキャリアを築くアーティストとして、自身のファンにユニークな新年のメッセージを送ってくれた。「何かを願う代わりに、もっと実用的なことを言うね。私たちは、必ずしも一つにしぼって夢を追いかける必要はない。まずは自分を理解して、自分の立ち位置を知ることが最優先だと思う。欲しいものは、その後に追い求めればいい」