

東京芸術大学音楽学部大学院修了の経歴から“教授”の愛称で知られる坂本 龍一は、1970年代半ばから、フォーク、ポップ、ジャズなど、ポピュラー音楽界を中心にセッションミュージシャンとして頭角を現す。1979年には、YELLOW MAGIC ORCHESTRAのメンバーとしても活動しながら、異なるジャンルのミュージシャン同士の競演をテーマにしたアルバム『サマー・ナーヴス』をリリースするなど、演奏家として独自の道を模索していた。また、同じ年には、編曲を手掛けたサーカスの「アメリカン・フィーリング」が音楽賞を受賞し、アレンジャーとしても高い評価を獲得、名実ともにトップミュージシャンの一人となった。ここでは、坂本 龍一の演奏家/作曲家/編曲家としてのキャリアに注目。演奏家としての初期の代表作であるジャズギタリスト、渡辺香津美とのセッションや、YELLOW MAGIC ORCHESTRA結成前夜となった細野晴臣のアルバム『はらいそ』から「ファム・ファタール~妖婦」、CMソングとしてリリースされ、大きな話題を集めた忌野清志郎とのシングル。そして、オーケストレーションやリズムなど、その洗練されたアレンジによって、“シティポップブーム”の一端を担った伊藤銀次、大貫妙子、南佳孝の作品や、現代ブラジル音楽界の巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンへの敬愛が結実したJaques Morelenbaum夫妻との共演作。さらには、キャリアの晩年に取り組んだカールステン・ニコライ(Alva Noto)やフェネス、エレクトロニカ系アーティストとのコラボレーションなどをセレクト。往年のファンには懐かしく、若いファンには新たな出会いとなる、“坂本龍一”というジャンルレスな音楽家の活動を堪能しよう。