

昭和中期以後の屈指の映画スターである石原裕次郎は、歌手としても数多くの作品を残している。幼少期から歌うことが好きだった彼は、1956年に俳優デビューすると一躍時代の寵児となり、主演映画のテーマ曲を歌うようになった。その朗々とした歌は低めの声域に深い響きと甘い味わいをまとっており、レコードはいずれも好セールスを記録。年を重ねると、出演ドラマの曲やオリジナル曲を歌いながら、傾向としてはムード歌謡が主体となった。特にデュエット歌謡の名曲 "銀座の恋の物語" や大ヒットした "ブランデーグラス" などは、時代を超えて親しまれている。そんな裕次郎の声の響きには、かつての日本の英雄の魅力が漂っているのだ。