

歌声のみならず、豊かな表情、あるいは "三波春夫でございます"、"お客様は神様です" といったセリフに見られるように、三波春夫は非常に明朗なオーラを放つ、真摯な歌手であった。デビュー当初は浪曲師としての下地を生かした歌謡浪曲というジャンルを開拓、"長編歌謡浪曲 元禄名槍譜 俵星玄蕃" はその代表曲。また、1970年開催の大阪万博のテーマソングになった "世界の国からこんにちは" は、三波の美声と当時の日本を象徴する朗らかな曲調とが見事に世相にマッチし、大ヒットを記録した。さらに後期にはアニメ作品とのコラボレーション曲も発表するなど、三波の歌声はさまざまな楽曲に乗って、昭和という時代を明るく駆け抜けていったのである。