

近代的なチェコ音楽の樹立に大きく貢献したことから、チェコ国民音楽の父と称えられるベドルジフ・スメタナ。1848年にヨーロッパ各地で起こった革命で愛国心をかき立てられた彼は、祖国の歴史や情景に基づいた作品を次々に発表した。また、優秀なピアニストでもあったスメタナはリストを深く敬愛。その影響で彼が創始した交響詩に傑作が多いのも特徴だ。そんなスメタナの最も有名な作品が、最晩年に残した全6曲の連作交響詩「わが祖国」。当時の彼は耳の病気に苦しんでおり、第2曲 "モルダウ" の作曲中に完全に失聴してしまった。作曲家には致命的なこの障害を乗り越えて全曲を完成するまでには、実に5年の歳月を要している。