ファーストネーションズ・オーストラリア ベスト

ファーストネーションズ・オーストラリア ベスト

アボリジニとトレス海峡諸島の人々(オーストラリアの先住民“ファースト・ネイションズ”と総称される)は、世界最古の現存する文化を形成しており、彼らの物語や伝統、文化の多くは歌を通して共有されている。主にアボリジニのメンバーからなるグループがアボリジニの言語で歌った曲として、初めてオーストラリアでチャート入りを果たしたのは、1991年にリリースされたYothu Yindiの「Treaty」だった。この曲はメインストリームのオーディエンスに、先住民の物語や生活描写に初めて触れる機会を提供した。そして長い歳月が経過した今、先住民のアーティストの人気は現代の音楽シーンの随所で確認することができる。 彼らの音楽の多くは、家族や不正や抑圧についての力強い物語を伝えている。Archie Roachが1991年に発表した「Took the Children Away」は、“盗まれた世代”(60年以上にわたって、何千人もの先住民の子どもたちが家族から強制的に連れ去られた史実)に思いを寄せながら、最も印象的に描いた曲といえるだろう。また、ヒップホップデュオ、A.B. Originalによる「January 26」は、オーストラリア政府に対して、植民地支配、土地収奪、虐殺、広範な抑圧を記憶に留める祝日の日付を変更するよう求めている。そしてChristine Anuの「My Island Home」は、自身のルーツであるトレス海峡諸島民の遺産や土地に捧げた、ゴージャスで高揚感あふれる頌歌だ。 最近では、先住民の音楽やアーティストがかつてないほどに存在感を増し、世界中で人気を博している。カミラロイ族をルーツに持つザ・キッド・ラロイは、グラミー賞にノミネートされ、「STAY」のような豪華なコラボレーションでチャートを制すなど、オーストラリアのヒップホップアーティストとして最もグローバルな成功を収めている。他にも、Baker Boyが陽気なファンク、Thelma Plumが情感あふれるポップ、そしてロックのMo’Juのブルースロック、親密なアコースティックサウンドを聴かせるEmily Wurramara、一度聴いたら耳から離れない歌声のJessica Mauboyなど、あらゆる音楽を奏でるアーティストたちが活躍している。先住民コミュニティは、音楽や歌を通して6万年以上も絆を深めてきた。その伝統は、これから先も末長く続きそうだ。