

ディートリッヒ・ブクステフーデはバロック期の北ドイツにおける際立って独創的な作曲家であり、当時の最も優れたオルガニスト、即興演奏家の一人だったことでも知られている。そんなブクステフーデがヨハン・ゼバスティアン・バッハに多大な影響を与えたことは、音楽の長い歴史の中でも重要な一幕といえるだろう。バッハはこの偉大な先達の演奏を聴くために、アルンシュタットから400キロもの道のりを踏破し、ブクステフーデがオルガニストを務める教会があるリューベックを訪れたのだ。ブクステフーデが書いた合唱曲、室内楽曲、器楽曲は美しく丁寧に構築されていながら、まるで自然に湧き上がってきた音楽であるかのような響きを持っている。その独特の趣もまた、バッハへと受け継がれていった。