

間違いなく20世紀を代表する女性歌手の一人。デビューからしばらくは非凡な歌唱力と共に声の幼さも残しているが、その無垢で晴れやかな表現は、むしろ純粋な感動、言いしれぬ郷愁を誘う。時代の流行歌、台湾でブームを巻き起こしたキャンパスフォークも幅広くカバー。日本での活動開始に伴って音楽性はいっそう広がり、演歌、歌謡曲に託された寂寥感、童謡や民謡が伝える市井の風物詩などを艶やかに、柔らかく歌い込んでいった。また、アメリカ留学で洋楽をライフスタイルと共に体感する一方で、宋の時代の詩にメロディを付けて歌った傑作アルバム「淡淡幽情」に代表されるような、中国文化の継承、再発見にも精力を注いだ。