スカートとは、すなわち澤部渡のこと。彼の歌声、メロディアスで叙情豊かな楽曲、そしてそれをポップにさく裂させたバンドサウンドとの融合が大きな魅力である。もともとは澤部が音大に在籍していた2006年に始まったソロプロジェクトで、当初は音源を自宅録音で多数制作。やがて彼はそれをバンド形態へと発展させてライブを行うようになり、2010年から作品を発表していく。2017年にはフルアルバム『20/20』でメジャーデビュー。このリリース前後からは映画やドラマへの楽曲提供、ラッパーのPUNPEEとのコラボレーションなど、活動のフィールドが拡大していった。また、初期のインディー時代の楽曲は2020年にあらためて録音され、アルバム『アナザー・ストーリー』となって世に出されている。そんなスカートの音楽において一貫しているのは、切なさを伴ったセンチメンタルな感情だ。その感傷性の深みは、澤部がいかにキャリアを重ねても失われることはないだろう。