

クシシュトフ・ペンデレツキはクラシック界における前衛的な作風の作曲家の中にあって、もっとも広く一般のリスナーに知られているうちの一人だろう。それは、スタンリー・キューブリックやデイヴィッド・リンチといった映画監督が、それぞれ『シャイニング』や『ツイン・ピークス』といった作品で、彼の奇怪な音楽を使ったことによるところが大きい。ポーランド出身のペンデレツキは、ストラヴィンスキーやヴェーベルンといった革新的なモダニストに影響を受け、1950年代の後半に作品を発表するようになる。その頃の楽曲の一つが、1960年に完成され、彼の作品の中でとりわけ演奏される機会が多いものとなった「Threnody to the Victims of Hiroshima(広島の犠牲者にささげる哀歌)」だ。ペンデレツキが20世紀のうちに書いた作品の多くは政治的な出来事をモチーフにしたものだったが、音楽のスタイルは常に進化を続けた。例えば、宗教的なテーマを不協和音で表現したり、78歳にしてレディオヘッドのギタリスト/作曲家、ジョニー・グリーンウッドとコラボレーションをしたり、といったように。2020年の3月に亡くなったペンデレツキは、クラシック界において際立って革新的なアプローチをした作曲家として、永遠に人々の記憶に残るだろう。