19世紀前半のイタリアで多くのすぐれたオペラを残したガエターノ・ドニゼッティ (1797-1848)。創作活動の初期はロッシーニの華麗で力強い作風の影響を受けていたが、悲劇的なオペラを得意とするようになっていった。中でも、"狂乱の場" で名高い "Lucia di Lammermoor（ランメルモールのルチア）" (1835)は、ロマン的な抒情性と悲劇的な表現が絶妙に融合した傑作。一方、喜劇作品では、1832年に完成した "L'elisir d'amore（愛の妙薬）" が有名で、人間の心理が細やかに描かれている。作曲のスピードが非常に速かったドニゼッティは、カンタータをはじめとした宗教音楽にも傑作が多い。