

エリック・サティが生涯を通じて作曲したほとんどの作品は、ピアノのための小品である。プレイリストにある "Gnossienne" は、19世紀末のパリ万博で聴いたガムラン音楽やルーマニアの音楽に影響を受けて作曲したといわれ、ルイ・マル監督の映画でも印象的に使われた。高橋悠治が弾く "Je Te Veux" の原曲はシャンソンとして作ったもの。奇妙なタイトルに目を奪われがちだが、サティの音楽は一貫して美しく清らか。旋律や和音のあるべき姿、あるいは音楽そのものを問い続ける姿勢を崩さなかった。まるでコンサートホールではなく、人間が持ち歩いて聴くことを想定していたかのような感覚になるから不思議だ。作曲家の John Cage が慕っていた点にも納得がいく。