THE ALFEE

すべてにおいて唯一無二のバンド、それがTHE ALFEEである。何しろ演奏力は日本のバンド界随一の実力派ぞろいで、高いアーティスト性を併せ持ちながらユーモアのセンスもある。音楽性はハードロックにヘヴィメタルからフォーク、プログレ、そして歌謡曲や演歌にクラシックと、まさにジャンルを超えたレンジを誇る。しかも歌の世界はポジティブかつ深い味わいをたたえている。THE ALFEEのようなバンドは他に思いつかないだろう。桜井賢（Vo/B）、坂崎幸之助（Vo/G/Per）、高見沢俊彦（Vo/G）の3人は決して一朝一夕でこの境地に到達したわけではない。「星空のディスタンス」（1984年）や「サファイアの瞳」（1987年）といった大ヒットを放つ以前の彼らは長い下積みを経験している。当時はバンド名を変えたり、外部の作家の曲を歌ったり、またメンバーそれぞれの個性が音楽性を定め切れない要因にもなるなど、なかなか安定した活動にたどり着かなかった。しかしそのころの蓄積や試行錯誤はやがて豊かなサウンドへと昇華され、全員がリードボーカルをとるスタイルも定着。バンドは「メリーアン」（1983年）でついにブレイクを果たし、翌年リリースのアルバム『THE RENAISSANCE』は傑作との評価を受けている。そして確かな音楽性を手にしながら、例えば演奏をしないBE∀T BOYSという覆面バンドで活動したり、CM出演でユーモラスなところを見せたりするなど、3人の気取らない性格も根強く支持される一因といえる。それでいて数々の名曲に、破格の動員数。ここまで多面的な魅力に満ちたバンドを作ることなど、どこの誰だって、できやしないだろう。