KOWICHI

カジュアルなボキャブラリーと、リリックが聴き取りやすい鮮明なフロウを駆使する。率直な語り口にユーモアも交えながら、ラップをエンターテインメントとして成立させる個性派ラッパー、KOWICHI。例えば、pukkeyやDJ TY-KOHと共演した「BOYFRIEND#2」およびKOHHやYOUNG HASTLEも参加した同曲のリミックス。またはゲストとしてフィーチャーされたDJ TY-KOH & YOUNG HASTLEの「バイトしない」やYOUNG HASTLEの「おんなのこ」。これらはKOWICHIというラッパーの個性が存分に発揮された代表曲だ。自身の欲望にただただ忠実で極めてパーソナルな内容でありながら、リスナーはどこかで共感しつつその情景を思い浮かべながら楽しめてしまう。KOWICHIのラップにはそんな不思議な魅力が詰まっている。軽薄な印象を与えかねないあけすけな表現も、KOWICHIは優れたエンターテインメントとして成立させる。内容が瞬時に理解できる聴き取りやすいラップの手腕も含めて、ラッパーとしての豊かな表現力があるからこそできる業だ。もともと2000年代からラッパー2人組のenmakuとして活動してきたという確かな土台があり、2012年にソロデビューを果たした後も常にセンスとスキルのアップデートを重ねてきた過程が結実している。