Kehlani

Kehlaniは2019年のApple Musicのインタビューで、ティーンポップグループのPoplyfe脱退後にレコード契約を獲得した時のことについてこう語っている。今こそ自分のために、“本物の”何かに取り組むチャンスだと思った、と。それからリリースした2つのミックステープの反応は上々で、2015年の『You Should Be Here』はビルボードR&B／ヒップホップチャートで5位を獲得した。だがビジネスサイドの人間からは、もっと上を目指せばスーパースターになれるはずだ、と言われ続けたという。「それで『やらせて！』って乗っかっちゃって。だけど、実際やってみたら “最悪”だったってわけ」。今振り返ってみれば、実はこういうところがKehlaniの魅力でもある。 1995年、カリフォルニア州オークランドで生まれた本名ケラーニ・パリッシュは、現代のR&B界で最も影響力のあるシンガーの一人であり、セルフケアやセクシャル・フルイディティ（男女の枠にとらわれないジェンダーの形）、ソフトなニューエイジっぽさなどを、率直かつリアルに、楽しく伝えてきた。無造作なまとめ髪が最高に似合い（「Unconditional」）、恋愛や精神的な悩みを占星術に頼り（「Water」）、相手とパンを分け合い、世界中を旅し、あちこちに居候しながら、日銭も稼ぐ（「Change Your Life」）人間である。 何よりも、Kehlaniは自分自身に、自分の音楽に、そして自分のオーディエンスに対して誠実なのが分かるだろう。もしそれがこのシンガーのリアルな人間性でないとしたら、なかなか演技が上手だということになる。