「Back Again」というタイトルはデビューシングルには珍しいかもしれないが、Joel Corryにとっては理にかなっていた。2015年に初めて作品をリリースした時、イギリス人DJ／プロデューサーである彼は、MTVのリアリティ番組『Geordie Shore』への出演によって国内ではすでに有名人だった。同番組では出演者の恋愛の失敗が面白おかしく描かれていたが、Corryは自身の音楽活動をはるかに真剣に捉え、クラシックなハウスサウンドを現代的な滑らかなタッチで誠実にアップデートしていった。1989年にロンドンで生まれたCorryは、UKガラージのセクシーなサウンドがアンダーグラウンドのダンスミュージックをポップシーンに押し上げた2000年代初頭にはまだ子どもだったが、彼の作品には同様のクロスオーバー精神が宿っている。2015年の「Back Again」と「Light It Up」ではビッグルームEDMと戯れた一方で、2019年に大ブレイクした「Sorry」では過去に目を向けている。同曲では、Monsta Boyが2000年にリリースしたUKガラージの名曲をカバーして、ソウルフルなボーカルと切れのいい小刻みのドラムマシンを組み合わせた。続く「Lonely」や「Head & Heart」などのシングルでも同様のアプローチを追求し、1990年代ダンスポップのピアノコードやオルガンのスタブを21世紀のプロダクションでアップデートしてみせた。Corryのタイムレスなフックはラジオ向きだが、一方で彼は常にダンスフロアのために特別なものを作るように心掛けている。彼がApple Musicに語った、「どの曲にも自分でVIPミックスを作りたい」というのは、もう少しタフでヘヴィなクラブ向けバージョンを作るという意味だ。リアリティ番組を過去のものにして、現在のJoel Corryはただただ自分に正直であり続けている。