BTSを単なるボーイズグループと呼ぶのは、コンピューターをスクリーン付きのタイプライターと呼ぶようなもので、その本質を捉えていない。確かに、彼らは歌って踊り、クールな髪型をして、全員の衣装はつねにいみじくもマッチしている。しかし彼らは社会を変える原動力としてポップミュージックを歌い、故郷の韓国だけでなく、大衆文化全般で触れることを避けられがちな、メンタルヘルスやLGBTQ、階級格差といったテーマを扱う。彼らのファンの正式名称である「ARMY」は「Adorable Representative MC for Youth（若者を代弁する魅力的なMC）」の略語だが、そこにははっきりと、自分たちは信じるもののために進んで戦う、という意味が込められている。

K-Popのプロデューサー、Bang Si-hyukによって2010年に結成されたBTSは、V、J-HOPE、RM、JIN、JIMIN、JUNG KOOK、SUGAの7人から成る。たちまち韓国最大の人気グループの仲間入りを果たしただけでなく（後に韓国の音楽史上最も売れたアーティストになる）、メインストリームのグローバルポップに進出するK-Popの象徴的存在にもなったが、彼らがほぼ全曲を韓国語で歌っているという事実を考慮すれば、この快挙はなお一層印象深い。ブランドを確立するだけにとどまらず、BTSはユング派の精神分析やニーチェの哲学を思い起こさせる引用をふんだんに取り入れた豊かなパラレルワールドを作り上げたが、それはスターになるのを夢見るティーンポップには、なかなかお目にかかれないことである（2016年の「Blood Sweat & Tears」のビデオは、息の合ったダンスパフォーマンスにヘルマン・ヘッセの小説『ダミアン』の引用を組み合わせた唯一の作品ではないにしても、再生数が5億回を超えたのは間違いなくこの作品だけだ）。

しかしどれだけバンドの神話が深みを増そうとも、彼らはシンプルで、明快で、気分を高揚させる存在であり続ける。2017年にはユニセフとパートナーシップを結んで若者を暴力から守るキャンペーンに参加し、その翌年には彼らのファンが子供の栄養失調撲滅のために100万ドル以上の募金を集めた。かつてSUGAは、お金持ちになったら韓国ではぜいたく品とされる牛肉をファンにごちそうする、と約束したことがあった。そして25歳の誕生日、彼は約2万ドル分の牛肉を児童養護施設に寄付し、しかもそれをARMY名義でやってのけたのだった。