Bring Me The Horizon

「同じサウンドの曲ばかり集めたアルバムを作ってどうするの？」と、Bring Me The Horizonのボーカル、オリヴァー・サイクスはApple Musicとのインタビューで疑問を投げ掛け、そこから彼らの変幻自在な音楽を支える理念が明らかになった。芋虫が蝶に姿を変えるかのように、ひときわどう猛なメタルコアで2000年代半ばにデビューしたバンドは、2015年、オルタナティブロックのメロディにとどろくギター、そしてエレクトロニックミュージックを緻密に融合させたアルバム『That’s the Spirit』でスターダムを手にしたころにはまったく違う存在に変貌した。しかし、それはまだ始まりにすぎなかった。彼らは数々のヒット曲の中で、彼らのヒーローであるLINKIN PARKのニューメタル時代と同じように、一貫してポップミュージックのあらゆるスタイルを取り入れるようになった。「Throne」ではEDM調のシンセサイザーを、うなるようなサウンドの「MANTRA」には非の打ちどころのない清らかなボーカルを織り込んでみせた。さらに2019年にエレクトロポップの奇才Grimesとコラボレートした「nihilist blues」では、Bring Me The Horizonがモッシュピットから、オールナイトのレイブサウンドへと展開したことがうかがえる。そしてそれらの楽曲はどれも、ジャンルを超越した輝きを放っているのも驚くべきことだ。Bring Me The Horizonは、志を同じくするI Prevailやア・デイ・トゥ・リメンバーらと共に、ジャンルの壁を越える冒険心と徹底的にキャッチーなフックを愛する心を持ち、ヘビーでリフ中心の音楽を再定義してきた進歩的なメタルコアバンドである。