TYLA

TYLA

「ずっとポップスターになりたかったけど、それだけじゃなく、アフリカのポップスターになりたかった」とTylaはApple Musicに語る。「私のサウンドのルーツは、南アフリカとアフリカ全体で発展してきたアマピアノミュージックだから」。南アフリカ出身のシンガーソングライターである彼女は、2023年のシングル「Water」が世界的にバイラルヒットしてSNSで大きな話題となったのをきっかけに、Billboard Hot 100のチャートでアフリカ人女性ソロアーティストとして過去最高位を記録し、グラミーで最優秀アフリカンミュージック・パフォーマンス賞を獲得するに至ったが、それはトップに上り詰める道筋を何年もかけて入念に考え抜いてきた結果だった。「アマピアノでサウンドの実験を始めるようになってから、新鮮だけど懐かしくて、自分のルーツを感じられる音楽を作れるようになってきたと思う」と彼女は言う。「アマピアノはアフリカのサウンドで、私にとって最高の誇りなんです」ポップ、R&B、アマピアノ、アフロビーツを巧みに取り入れた『TYLA』は、恋愛や失恋を通して自分を見つけ出す成長物語が描かれたアルバムだ。「アルバム制作中の、大体3年くらいの間に経験したことを歌っています」と彼女は言う。「大人の女性になる過程だった。だから大きく成長できたし、自分の価値に気付いて、自分がどう扱われたいのか分かっていくことを歌ってる。つまり、私はそういう女の子で、みんなにそれを分かってほしい」プロジェクトの実現にはSammy Soso、Mocha、Believve、Rayo、Sir Nolanといった世界各国のプロデューサーの手を借りたが、Tylaは全員に母国の感覚を分かってもらえるよう徹底した。「(重要なことだったので)何人かに実際、南アフリカまで来てもらいました」と、彼女は言う。「だからスタジオ入りする時には、背景を分かってもらえていました。中には水で薄めたようなアマピアノサウンドをやろうとする人もいて、ゾッとした。だから、たとえポップやR&Bとミックスするときでも、薄まったサウンドにはしたくなかった。アフリカでは、音楽は私たちのすべてだから。話し方も、踊り方も、文字通りダンスの動きなんて音楽そのもので、ごく自然に現われてくる。私たちの中に宿っているもので、私たちの本質だと言えます」。以下、Tylaが自身のデビューアルバムを全曲解説する。 IIntro 「Water」の前に、そして、いろんなミクスチャーを聴かせる前に、本当の南アフリカのサウンドというか、私のルーツが分かるサウンドでアルバムを始めたかった。Kelvin Momoとのセッション中、こっそりボイスメモに録音していました。セッション中にみんなが話してる言語やアクセントを聞いているのが楽しかったから。すごく生々しくてリアルだった。Kelvin Momoは私好みのアマピアノのプロデューサーで、彼の作る音楽やサウンドが大好き。 Safer この曲のメッセージには、多くの人が共感できると思う。それに、アルバムの幕開けにふさわしい力強いエネルギーがある感じがします。 Water 「Water」のヒットは完全に期待以上でした。グラミーだったりBillboard Hot 100だったり、あれだけ称賛されて、世界中の人たちが背中に水をかけながら踊ってくれるなんて思いもしなかった。レコーディングし終わってから、この曲ばかり聴いていました。私はそれまでずっと“かなり”いい子だったから、昔の自分から一歩踏み出したような感じもした。それに、この曲での私はもっと大人になって、もっと実験的になってる。卑猥な音楽は好きじゃないけど、言いたいことはちゃんと言いつつ、フレンドリーな感じで言ってる曲を作れた気がする。 Truth or Dare この曲ではハウス寄りのサウンドをやってみました。人に向かって、「へえ、“今は”あなたも気になるんだ」って言ってる。私はそういうタイプの人間じゃないけど、そんなふうに、「この人どこから来たの? いきなり現われて、今は私と話したいって?」って思ったことがあって、ものすごく嫌だった。そういう経験をした人って絶対多いと思う。 No.1 (feat. Tems) Temsとはだいぶ前から一緒に曲を作りたいと思ってて。やっとうまくいって、Temsの声だけでも最高で、他にはないものができました。この曲は誰が聴いても楽しめるけど、私の構想では、女の子に向けた曲。私とTems、ガールパワー、アフリカの女の子たちのことを考えていて、「私は出て行く。誰も必要ない。これ以上ここにいても損するだけなら私は消えるし、一人でうまくやっていける」っていうメッセージを押し出したかった。いつだって自分を最優先するべきだって。 Breathe Me すごくエモーショナルでリアルな曲。愛がテーマで、愛は強いもので、それさえあれば何も要らないってことを歌ってる。私は他に何も要らない。あなただって他には何も要らない。私とあなただけでいい、空気のように“私を”呼吸すれば、私たちは生きていけるって。 Butterflies 「Butterflies」ができたのは、(プロデューサーでソングライターのAri PenSmithとの)セッション中のこと。彼が取り組んでいた音源をいくつか聴かせてもらって、「いい感じ、いい感じ」って思ったけど、この曲を聴いたら心を奪われました。私の声にものすごくぴったりだったの。すぐに共感できたし、あまりに私の実体験に当てはまったから、歌わないわけにいかなかった。 On and On 「Water」とかよりも前の、私の(初期の)サウンドはこれでした。Corey Marlon Lindsay-Keayと一緒に南アフリカで作った曲。一緒に出かけるつもりだったけど、結局出かけないことになったから、私は完全にドレスアップしたままスタジオでセッションして、彼がプロデュースしてくれた。すごくノスタルジックなのに新鮮な感じがして、大好きな曲。オールドスクールなR&Bみたいなところが気に入っています。アリーヤの影響も感じられるけど、新しくて、新鮮で、アフリカンな感じ、つまりTylaのすべてがここにあるっていう。メッセージはそれほどシリアスじゃなくて、パーティーが終わってほしくない気持ちを歌っています。 Jump (Tyla, ガンナ & Skillibeng) 「Jump」には他と全然違うヴァイブスがある。自分がどんな人間かを伝えたくて、この曲を通して私の自信を見せたいって思った。オープニングのラインはSkilliの声で、「オリジナルガール、レプリカが要るか? ノー(Original girl, you want a replica? No)」って歌ってる。レプリカなんて存在しない。あのイントロはすでに完璧だったけど、続けて私が「ヨハネスブルグ出身のかわいい子なんていなかった/今は私がいるし、それがみんなのお気に入り(They've never had a pretty girl from Joburg / They see me now and that's what they prefer.)」って言うのが最高。あのラインはとにかく、私にはあまりに象徴的というか、女の子たちが歌ってくれて、特にヨハネスブルグや地元の女の子たちが歌ってくれるのを聴くと、ものすごくうれしくなる。それにガンナも参加してくれたことで、より一層生々しくてクールになって、そっちの世界にもっと入り込んでいけた気がします。 ART 私のことをすごく大事にして、まるで美術品とか、プリンセスみたいに扱ってくれる人と一緒にいると、ずっとそばにいたいって思う。その人の芸術作品(アートピース)でいたいって。その言い回しで遊んでみたところもあって、アートピースの“ピース”には平和とか安らぎの意味も込めてる。一人の女性として、私はそんなふうに扱われたいし、そうしてくれるなら私もあなたをそんなふうに扱いたくなる。大事にされる気持ちを歌った曲。 On My Body 自分の世界にとどまりつつ、ラテンのヴァイブスでちょっと遊んでみたところもあるから、この曲を作るのはすごく楽しかった。フィーチャリングは自然な成り行きでした。私がいたスタジオの隣で、彼女(Becky G)がセッションしてたから。彼女がこの曲をすごく気に入って、レコーディングしてくれたバースがすご過ぎてヤバかった。本当にヤバかったの。とにかく彼女のタッチが最高で、オーディエンスの幅を広げてくれた。あらゆる人が聴いてくれるようになってきたから。いろんなジャンルのるつぼになってて、それをさらに拡大できたのがすごくうれしい。 Priorities これは一番リリースしづらかった曲かもしれない。本当に心をさらけ出して、自分とどう向き合ってきたのかを打ち明ける内容だから。共感してもらえると思うし、多くの人が抱えながら表に出さないでいる感情を歌ってる。(同時に多くのことをやろうとして失敗したという状態は)すごく生々しくてリアルで、女性に限らず男性も、誰だって経験あると思う。 To Last この曲は心の底から大好き。LuuDadeejayと一緒にヴァール川にいて、本当に5分で仕上がった。歌詞は私の友達が当時経験してたことがベースになったけど、その1年くらい前に、「あなたは最初から私たちのことあきらめてた、長続きしてほしくないみたいに(You never gave us a chance, it's like you never wanted to last)」って歌詞を自分で書いていた。それが頭に浮かんで、この曲が私の中から流れ出てきたの。結局自分が実際そんな気持ちになる経験をする羽目になって、まるで未来を予測したみたいで、それってよくないけど、この曲にもう一度心を奪われてしまった。すごく南アフリカなサウンドというか、アマピアノで、ハウスっぽくて、私たちのサウンドだと言えます。 Water (Remix) トラヴィスの方から連絡があって、「Water」が気に入ったって言ってくれて。そのころの私は「リミックスはやりたくない、遠慮しとく」って感じだったけど、トラヴィス・スコットなんて予想外過ぎて、ものすごくやりたくなった。そして、彼は見事にキメてくれたの。バースに南アフリカへのシャウトアウトを付け足してくれて、地元のみんなが絶対気に入ってくれると思った。私たちのことを認めて、+27(国際電話で使う南アフリカの国番号)とかそういうことをいろいろ入れ込んでくれたから。それに、彼が違ったエネルギーを曲にもたらしてくれたのもうれしい。「Water」は夏にぴったりの曲だってみんな知ってるけど、トラヴィスはそこを変えずに、もっと骨太な感じにもしてくれた。アフリカっぽいサウンドの曲で彼に参加してもらうのは、完璧なコラボでした。

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