The New Four Seasons - Vivaldi Recomposed

The New Four Seasons - Vivaldi Recomposed

マックス・リヒターによるアルバム『Recomposed by Max Richter: Vivaldi, The Four Seasons』がドイツ・グラモフォンからリリースされたのは2014年のことだった。1725年に出版された歴史的名曲、ヴィヴァルディの『四季』を大胆に再構築したこの作品は、古典への敬意と革新性を見事に両立させた傑作であり、バイオリニスト、ダニエル・ホープとKONZERTHAUS KAMMERORCHESTER BERLINによる名演も相まって、クラシック界に旋風を巻き起こした。そしてその7年後の2021年、リヒターはバイオリニスト、エレナ・ウリオステとチネケ!オーケストラを招き、ガット弦を張ったピリオド楽器を使ってこの作品を再録音し、2022年に再びドイツ・グラモフォンからリリースした。「特に問題はありませんでした」とリヒターはApple Musicに語る。「ピリオド楽器は俊敏で軽快な演奏に適したもので、演奏家は素早くかつダイナミックにシフトチェンジしたり、より細かい音の機微を表現したりすることができます。確かに音量が小さくなるきらいはあるのですが、それは人間味を感じさせる音であるともいえます。より室内楽的で、ほっとする音色なのです」2014年リリースのオリジナル版で、ベースラインに重厚感を与えるためにリヒターが織り込んだデジタルサウンドが、本作ではきめの粗い初期のシンセサイザーの音に置き換えられている。その中には、1970年代を象徴する楽器の一つである初期のMinimoogも含まれており、リヒターはこの希少なシンセサイザーを手に入れたことについて、「インターネット上で捜索隊を組織して、やっと探し当てたのです」と語る。それはそうと、そもそも彼はなぜ『四季』をリコンポーズしたのだろうか。「多くの人たちと同じように、『四季』は私が幼いころにおそらく初めて触れたクラシック音楽でした」とリヒターは言う。「素晴らしいメロディ、ドラマ、ストーリー、アイデアのすべてに魅了されたのです。ところが大人になって曲の一部が何かのジングルやCMなどに使われているのを聴いているうちに、いら立ちを覚えるようになってしまいました。この『Recomposed』は、私が原曲に対して抱いていた愛情やときめきを取り戻そうとして作ったものなのです」。ここからはリヒターが『The New Four Seasons – Vivaldi Recomposed』の各協奏曲について詳しく語ってくれる。Spring『Spring』はアルバムの序曲のようなものです。「Spring 0」でシーンを設定した後、「Spring 1」ではヴィヴァルディが描いた鳥たちのさえずりが始まります。一方、21世紀に生きる私たちは、ストラヴィンスキーの『春の祭典』の冒頭部分やメシアンのピアノ曲など、鳥の歌声を表現した多くの楽曲を知っていますよね。原曲では2、3羽なのに対してここでは8羽の鳥たちがさえずっており、その下にはヴィヴァルディが書いたものではない、長い音符のラインとハーモニーもあります。つまり作曲したり編曲したりすることは、時代と深く関わっているのです。緩徐楽章はヴィヴァルディによる4小節のフレーズを中心に構成されていますが、私がリハーモナイズし、文脈を書き換えて、再構築しています。最後の速い楽章はヴィヴァルディによる7つの音符のフレーズを基に構成しました。私はこれを“偉大なる小さな種”だと考えたのです。そこで、このフレーズを生かしつつ、この楽章の他の要素をすべて新しいものに書き換えました。Summer「Summer 1」と「Summer 3」はパターンミュージックそのもので、『Recomposed』の中で最もダンスミュージック的な部分となっています。ヴィヴァルディによる“パターンから音楽を作る”という原則に沿いながらも、すべての要素の限界値を上げているのです。例えば第1楽章では、ヴィヴァルディが16分音符の速いシークエンスの間に一息入れるのに対して、私は永久に運動を続ける装置のようなものを作りました。ヴィヴァルディの原曲に含まれている推進力を前面に打ち出したのです。緩徐楽章ではヴィヴァルディが書いたフレーズの断片を取り出し、それらを分離して、リピートして、文脈を書き換えることによって、より壮大な音世界を創出しました。最終楽章は第1楽章と同じように舞曲のエネルギーにあふれています。Autumn『Autumn』ではヴィヴァルディのマテリアルの中にたくさんの“わな”を仕掛けました。原曲のアンサンブルには明確な4拍子のパルスがあるのですが、私はそれを崩しているのです。つまり、4拍子ではなく、7拍子や5拍子、3拍子にしたことで、耳なじみがありながらも意外性を含む音楽が出来上がりました。これは私たちの記憶をもてあそぶ、ちょっとしたいたずらです。リスナーは曲の至る所で“今何が起こったのだろうか?”と戸惑うことになるのですが、私にとってはそれが楽しいのです。演奏するのもとても楽しいですよ。緩徐楽章にはほとんど手を加えなかったのですが、ハープシコードのアルペジオだけ書き換えました。たんたんとした8分音符にしたかったのです。ビートルズの『Abbey Road』に収録された「Because」のクラビネットによる8分音符のアルペジオを、後ろから前に向かって弾いているような感じです。最終楽章の脈打つようなテクスチャは、ヴィヴァルディの原曲にあるバイオリンの1小節のフレーズから構築しました。Winter『Winter』の第1楽章はかなり原曲に忠実ですが、1小節を7拍にしたことで、そのずれがくせになるような効果を生んでいる部分があって、とても気に入っています。バイオリンの速弾きがジミ・ヘンドリックスを思わせる瞬間もあって、これも一興です。緩徐楽章ではヴィヴァルディのメロディを生かしつつ、伴奏パートをひんやりした響きのハーモニーに差し替えました。ガット弦から生まれた音が実に美しく、それは期待以上のものでした。最終楽章は16分音符からなる2つの小節を中心に構成しました。原曲から取ったのはここだけで、あとはひたすら脈打ちながら落ちていくラインがあるのみです。バイオリンは常に上昇し、オーケストラは下降するので、すべてが拡張し、大きくなっていくような感覚になります。

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