some kind of peace

some kind of peace

「心にあるものをそのまま映し出すようなアルバムを作りたかったのです」とオーラヴル・アルナルズはApple Musicに語る。「まさにこれは私の人生についての作品であり、私と人々との結びつきについての作品です。そしてより良き日々に向かって進んでいくものなのです」。2018年のアルバム『re:member』が、この独創的な作曲家の、最も外向きで野心的なクリエイティビティを示したものだとすれば、本作『some kind of peace』は彼が2020年の異常な状況に誘発されて、これまでにない、よりパーソナルな領域へと旅をする姿を見せた作品となっている。「世界規模の感染拡大は私たちにコミュニティの大切さ、日々の礼拝やお互いのつながりの大切さを思い出させました」とアルナルズは言う。「それこそがこのアルバムで私が探究したことなのです」と。アルナルズはこれまでのアルバムと同様に、 彼の音楽に新たなアイデアと質感を与えるアーティストたちと今作でコラボレーションしている。参加しているのはアイスランドのシンガーソングライターJFDR、作曲家でプロデューサーのJosin、そしてアルバムの幕開けで魅惑的なエレクトロニックサウンドを聴かせてくれるDJでプロデューサーのBonobo。「同じことを繰り返し、全てに対してより広いビジョンを持とうとしないのは簡単なことだけど」と彼は言う。「コラボレーションはそのような殻を破り、新たな視点を得る一つの方法なのです」。オーラヴル・アルナルズがこの素晴らしいアルバム『some kind of peace』の各曲をガイドしてくれる。Loom去年の夏、DJでプロデューサーのBonoboと私はアイスランドの高地でハイキングをした後その足でスタジオに向かい、楽しい時間を過ごしました。この曲はそんな中から生まれたもの。このアルバムであまり使われていないエレクトロニックサウンドでアルバムの幕を開けるのはおかしな選択かもしれません。でもこれはパーフェクトだと思います。なぜならこの曲が、ここ数年私がやってきたことから新しい世界へとリスナーを連れて行ってくれるから。「Loom」はまさにエレクトロニックで、神秘的かつリズミカルにスタートし、終盤ではこの後に続くアルバムの世界への扉を開くことになります。Woven Song「Woven Song」ではピアノと一緒にアマゾンの先住民の歌声をフィーチャーしています。これは私が歌声の主と同じ民族出身の友人を持っていることと関係しています。私はいつも楽器にとてもソフトかつ静かであってほしいと思っているのですが、理由はその方が私が音楽的に楽器を扱う上で快適さと自由さを感じることができるからです。楽器がとても静かであればマイクを近くに置く必要があり、そうすると機械的な動きの音やピアノ椅子がきしむ音まで聴こえるようになるのです。これが素晴らしい効果音となります。トラックが出来上がった時、私は今回のアルバムがどんな作品になろうとしているのかを完全に理解しました。Spiral3分半にわたって繰り返される短いメロディからなる楽曲です。最初はバイオリン、次にビオラ、最後はピアノと続きます。元々はアメリカのテレビシリーズのために書いたものだったのですが、しっくりこなかったのでそこでは使わず、他のところで生かそうと思いました。このアルバムのために書いたものではないので、収録するかどうか迷っていたのですが、パズルのミッシングピースのような存在となったのです。最後のところのピアノは120年前に製造された蝋管式蓄音機で録音したことによって、古めかしくノスタルジックなサウンドとなっています。Still / Soundこのアルバムの中でもひときわエレクトロニックなトラックです。ここで私は再び神秘的なパートへと移行していきます。アルバムの中でもとても気に入っているものの一つで、完璧な曲だと思います。『some kind of peace』の中で最も重要なトラックの一つなんですが、まだその理由は見つかっていません。Back to the Sky「Back to the Sky」では、ずっと一緒に仕事をしたいと思っていたアイスランドのミュージシャンJFDRをゲストに迎えています。彼女がこのアルバムにぴったりなのは、彼女がとてもミニマルな音楽を書く人で、彼女の声が楽器の一つとなってくれるからです。タイトルはJFDRの書いた歌詞の一部を取ったもので、興味深いのは彼女がこの歌詞を書いた時に考えていたことを私が全て理解していた訳ではないということです。しかし同時に、この歌詞はこのアルバムに完璧にフィットしています。この曲は同じ場所を通っているのにお互いを見つけることができない人々の、失われた絆を表現するものでもあるのです。Zero「Zero」はアルバムのもう一つのターニングポイントになっています。「Still / Sound」や「Back to the Sky」が夜や暗闇の時間を表しているとすると、「Zero」は明るさが戻ってくる瞬間なのです。これは私が過去10年間で初めて転調を使った曲だと思います。普段は転調をするのは嫌いですから。 この曲では短調から最後には全く違う長調へと変わります。徐々に声が入ってくるところは、美しい合唱のように聴こえますが、実はひずんでいて、寒々しい、加工された声なのです。New Grassタイトルから想像できる通り、希望にあふれ、美しく、魅力的な新しい土地や領域についての曲です。より幸せな時間が流れます。タイトルは、実は私が大好きなバンドの一つであるトーク・トークの曲「New Grass」から拝借しました。彼らへのちょっとした恩返しです。ここではアルバムの中で最も豊かな弦楽をフィーチャーしています。アルバムの多くの中でミュージシャンの演奏はとてもミニマルなものなのですが、この曲は少しアクティブなものになっています。The Bottom LineJosinは私たちが交わした会話をベースに、曲に歌詞を付けてくれました。歌詞の言葉は、私たち両方から生まれたものだともいえます。私たちは今の時代に自分たちが経験している変化について多くのものを共通して感じていたのです。例えばこの状況を生き抜くことの大変さや、一方では今まで見たことがないような美しい景色があることに気づく難しさといったことです。どんなに苦労しても山の頂にまでたどり着かなければいけないのです。音楽的にはJosinが歌詞の中で伝えようとしていることに沿うように努めました。例えば彼女が「目を開けて」と言う時には、弦の音もまさにそれに合わせています。We Contain Multitudes私はいつも年の半分をインドネシアで過ごしています。そこには友人たちがいて、私のセカンドライフがあるのです。この曲はジャングルの中にある友人の木製キャビンで生まれました。彼はそこに電子ピアノを置いていて、彼が絵を描いている間、私はそれを弾いて一緒に過ごしていたのです。タイトルはウォルト・ホイットマン の『Song of Myself』という詩に敬意を表したもので、詩の中で“私の中には大勢の人がいる”と言っています。私たちはみんな自分の中に多様なパーソナリティを持っていて、私たちがどこにいるか、誰といるかによって違ってくるということを彼は悟っています。私の人生は向こう側にもこちら側にもあって、そのことが自分が何者であるかを理解するのを難しくすることもあるのです。Undoneここで聴ける言葉は、今は亡きフォークシンガーのLhasa de Selaによって語られたもので、悲しみよりも希望にあふれています。私たちは死に向かっているけれども、実際に生まれ変わりつつあるという考えです。それは私たちが経験している変化と困難の比喩でもあります。人々はしばしば命に終わりはないように感じていながら、ある意味では時々死んでいるように感じているのです。しかし私たちはそれを乗り越えた時、命についての新たな視点を獲得したことを悟って、別の世界を生き抜いていくのです。冒頭部分で聴こえるピアノは曲全体に流れていきます。初めの内はランダムなリズムでテンポもなくあいまいなのですが、次第に形を成していきます。ラストの音はまるで最後の息のようです。

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