2000年代の初頭まで、ビクトリア朝時代の黒人作曲家Samuel Coleridge-Taylorの作品で知られていたのは、『Violin Concerto in G Minor』とオラトリオの大作『The Song of Hiawatha』をはじめとするほんのわずかな楽曲だけだった。2021年にレコーディングされた本作で、気鋭の若手演奏家たちから成るアンサンブルKaleidoscope Chamber Collectiveが取り上げたのは、Coleridge-Taylorがロンドンの王立音楽大学に在学していたころに書いた3つの知られざる室内楽曲。それぞれの作品は、この若き作曲家が繊細な色彩とテクスチャに対する直感的な才能を持っていたことと、学生でありながらすでに高度な和声法と対位法をマスターしていたことを物語っている。『Nonet in F Minor』の冒頭における快活で輝くようなサウンドはドヴォルザークを思わせ、ドラマチックな『Piano Quintet in G Minor』はブラームスのような広がりとエルガーのような情熱を持つ。Kaleidoscope Chamber Collectiveは、エネルギッシュかつウィットに富んだ演奏で、これらの作品を見事によみがえらせている。
カレイドスコープ・チェンバー・コレクティヴのその他の作品
- 2023年