Jagged Little Pill (25th Anniversary Deluxe Edition)

Jagged Little Pill (25th Anniversary Deluxe Edition)

『Jagged Little Pill』を聴けば、誰でも共感できる瞬間が見つかるだろう。初めは、怒りを込めた皮肉や答えのないような問い掛けに心を揺さぶられるが、時を経て年齢や経験を重ねるにつれ、この作品が持つ知恵が次々と明らかになっていく。当時を代表する作品となったアラニス・モリセットの本アルバムは、大声で叫べば爽快な気分になれるような、とげとげしく、あきれるような、忌まわしい真実の数々に満ちている。モリセットがグランジ、オルタナティブ、そしてメインストリームポップの溝を埋めてみせたのと同じように、このアルバムの色あせない魅力はカオスと矛盾を受け入れているところが大きい。大ヒットしたこの3作目(前の2作は母国カナダでトップ40入りしたティーンポップアルバムだった)は、詩的かつ単刀直入で、シニカルで理想主義的、辛口でいて純真で、迷いがありながらも希望に満ちている。さらに大胆不敵で挑戦的でもあり、カトリック主義やテクノロジー、そして男性の幼稚な態度にも鋭い批判の目を向けているが、同調する勇気のあるアーティストはそれ以来ほとんど現れていない。当時21歳で元ニコロデオンのスターだった彼女が、レーベルのMCAカナダから契約を解除された後の1995年にこのアルバムをリリースした時、その新鮮で悪びれない世界観は音楽シーンにかつてない衝撃を与えたのだ。アルバム収録曲のラジオ向きのフックやきらびやかなハーモニーの下には、人生の波乱と平凡さについての驚くような観察がある。落ち着きがなく気もそぞろな「All I Really Want」や、幸福感に惑わされる「Head Over Feet」を聴けば、このアルバムが人間の弱さをテーマにしていることが分かるだろう。しかしそれと同時に、「Not the Doctor」では、他人の問題のために母親やベビーシッターの役割を演じることを拒絶しており、こうした人間の強さもアルバムを通して描かれている。女性にとって、モリセットの歌詞の多くは報いのように響く。「Right Through You」では自分を真剣に扱わない男を批判し(「あなたは私のお尻をじっくり眺めて/それからゴルフにふけっていた」)、浮気した元カレを激しく揶揄(やゆ)する「You Oughta Know」では、露骨な軽蔑から湧き上がる怒りをこう捉えてみせる。「私が他の誰かの背中に爪を立てるたび、あなたもそれを感じるといい/どう、感じる?」しかし、たとえこのアルバムの核心にあるのが幻滅(それはほほ笑むことも、だまされたフリをすることも、甘やかすことも拒絶する)だとしても、リスナーはここに宿る希望、つまり血を流し、叫び、学んでいくこともまた、究極的には生きることなのだという考えにすがりついているようにも思える。恐らく、だからこそ、どんなに悩んで怒っていても、モリセットは比較的自分自身に優しいのだ。気楽なムードの「Hand in My Pocket」では、たばことタクシーの描写が当時の空気を感じさせながら、そこで彼女はまだ完全に理解できないでいる自分を許してみせる。そう、彼女が歌うように、全てはいずれうまくいくのだから。

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