Hyperdrama

Hyperdrama

2000年代初頭、パリのホームパーティーで知り合ったXavier de RosnayとGaspard Augéは、たちまち意気投合した。共に若手グラフィックデザイナーで、古き良きアメリカンロックの大ファンだった2人は、技術的に足りない部分をセンスで補った。センスといっても、当時のフランス人アーティストらしい“小洒落たセンス”とは少し違っていたのだが。「僕らが音楽を始めた頃、フランスのハウスミュージックはきっちり正確なことがすべてだった。そこに僕らがわけもわからぬまま現れたってわけだ」と、Xavier de RosnayはApple MusicのZane Loweに語る。ジャスティスの2人はグルーヴ感あふれるフレンチ・フィルターハウスシーンに、AC/DCのようなエネルギーと破壊的なひずみを持ち込み、激しさで知られる彼らのライブには、Marshall社のスピーカーの上に巨大なネオンの十字架がそびえ立った。 スタジオアルバム、ライブアルバムをそれぞれ3作リリースし、その後グラミー賞2部門を受賞したジャスティスは、かつてのタイトな革ジャンを脱ぎ捨て、今ではテーラーメイドのこざっぱりしたスーツに身を包む。4作目のアルバム『Hyperdrama』の収録曲も大方は、「Waters of Nazareth」「Stress」といった初期の楽曲のように耳をつんざく爆音ではない。とはいえ、2人が丸くなったわけではない。珍しくメロウな2016年の前作『Woman』から8年、2人は2007年のデビュー当時の緊迫感に再び立ち戻っている。「(コントラストが)最初から僕らの原動力だった。僕らはエレクトロニックミュージックの過激なところや暴力的なところが好きだけど、ブルーアイドソウルやヨットロックも好きだからね」 『Hyperdrama』の場合、甘美なディスコソングと爆音エレクトロニックは共存するだけでなく、ぶつかり合っている。それが一つの曲の中で展開することも珍しくない。「One Night/All Night」ではTame ImpalaのKevin Parkerの哀愁漂うボーカルに、激しいビートが叩きつける。「Generator」は初期ヒット曲の激しさを彷彿とさせ、サックスを前面に押し出した「Moonlight Rendez-vous」はジョージ・マイケルの「Careless Whisper」を思い起こさせる。フレンチエレクトロのレジェンドAlan Braxeにちなんだ「Dear Alan」は、レザーずくめの2人が悪目立ちした時代に主流だった陽気なフィルターハウスを思わせる。 彼らの作曲手法もフランス産ワインのごとく熟成したが、これまで同様、まずは直感ありきだ。「レコーディングやミキシングでは、『音質的に完璧なサウンドかどうか?』が基準ではなく、スタイルや感情面で判断することがよくある」とGaspard Augéは言う。「10回リッピングしたことで音が劣化して、ビットクラッシュのひずみやギラっと感が出ていい具合になるなら、僕らは迷わずそれでいく」

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