ソーシャルメディアの動画によって、多くの若手音楽家のアイコン的存在となったフランス人バイオリン奏者、Esther Abrami。デビューとなる本作で、オリジナルとアレンジによる魅力的な演奏を披露している。Abramiはクララ・シューマンとAmy Marcy Beachによる2つの美しいロマンスなど、女性作曲家の作品にスポットライトを当て、さらにレイチェル・ポートマンも映画『ショコラ (Chocolat)』のサウンドトラックからテーマ曲を自ら編曲してAbramiの遊び心を盛り立てている。また、このアルバムの醍醐味はアレンジ作品の豊かさであり、Florian Christlの「Bach Variation」はバロックと21世紀のネオクラシックを透き通るほど融合させたもので、冒頭を飾る「Swan Lake Variation」では、チャイコフスキーの名旋律を極上と呼ぶにふさわしいアレンジで聴かせる。優しさと思いがけない豊さにあふれた感動的なアルバムだ。