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1990年代中ごろからアンダーグラウンド・シーンで人気の高かったシンシナティ出身のヒップホップ・グループ、Five Dees の中心メンバーとして知られるプロデューサー / MCの Fat Jon が、2006年に Fat Jon The Ample Soul Physician 名義でリリースしたソロとしては4枚目のアルバム。ヒップホップのルーツ・ミュージックであるソウルやジャズに造詣が深く、温かみを感じさせるソウルフルなトラックには定評のあった彼だが、今作の制作前に拠点をドイツに移していて、かの地での生活による影響なのか、それまでに以上にエレクトロニックなサウンドがフィーチャーされている点が大きな特徴。もっとも、ファットなビートや柔らかなグルーブ感は健在で、そこにアクセントとしてエレクトロニックなサウンドを加えることでエモーショナルな叙情性に一層の深みを持たせている印象。聴いているとさまざまな光景が頭の中に広がるようなインスピレーションに富んだインストゥルメンタル・トラック集で、あらためてトラック・メイカーとしてのセンスの良さを感じさせる。