Lil Durkが2022年3月に発表した『7220』のオリジナルバージョンは、ウィニングラン的な役割を果たした。この約10年の間に、Lil Durkはシカゴのドリルミュージックシーンで将来を有望視される若手ラッパーから、現代のヒップホップ界で最も愛されるMCの一人に成長した。ミックステープやアルバムのリリース、そしてゲスト参加を重ねるごとに、驚異的にファンベースを拡大したのである。そして迎えた『7220』はキャリア史上最も待望されていた作品だった。彼はかつてなくパーソナルなラップと共に、新しい要素と慣れ親しんだ要素の両方をファンに提供した。「7220、そこは俺がいろいろと体験した場所なんだ」と、Lil Durkはアルバム収録曲の「Headtaps」で語る。「俺の最初の人生経験ってことだ、分かるだろ？」。『7220』という数字のタイトル、それは彼が敬愛する祖母の家の住所にちなんで付けられた。アルバムの中で、Lil Durkは刑務所にいる間に彼の子どもたちとアニメを見たいと願った時のことや、従兄弟の死のニュースを信じるのを拒んだ時のことなどを話している。「Shootout @ My Crib」で自宅に強盗が押し入ったリアルな話を語り、「AHHH HA」では、友人でコラボレーターのKing Vonのために思い描いた復讐（ふくしゅう）を実現する。しかし、このデラックスバージョンでは、オリジナルの詳細なストーリーの数々から離れて、彼が精通している“ライフスタイル・ミュージック“という新次元に進んだ。この『7220 (Deluxe)』には13曲の新曲が収録されており、そこではLil Durkの生きざまについてさらに深い洞察がなされている。そして、世の中の人々と全く同じように、彼の人生もまた矛盾に満ちているのだ。彼は、「So What」の中で、裕福で有名であることが世間で思われているほど素晴らしいことではないと告白しながら、「Huuuh」では自身と彼のアンチたちとの違いをはっきりと自覚している。そして「Burglars & Murderers」では悪い仲間たちとつるんでいるが、「Hearing Sirens」では、ストリートの暴力が彼の人生に残した闇の数々に打ちひしがれる。また、「IYKYK」では恋人たちが彼に期待して良いことといけないことを正直に語りつつ、「Selling Lashes」では苦境に立たされた若い女性たちに心を寄せる。ファンの多くは、このバージョンの『7220』を聴く前からLil Durkがこうした多面性を持っていることを知っていただろうが、彼は今作でコアなファンも予測していなかったレベルの表現を達成している。Lil Durkは、シカゴの7220 S.Halsted通りに住んだ人の中で一番有名になった人物について、かつてないほどに開示してみせたのである。